八王子抗争

八王子抗争事件：山口組と二率会の激突

八王子抗争は、1990年2月15日から2月25日にかけて、東京都八王子市を中心に発生した五代目山口組宅見組と二率会との間で繰り広げられた大規模な暴力団抗争事件です。この事件は、その激しさから「八王子事件」とも呼ばれています。

抗争の経緯

発端

抗争の発端は、1990年2月14日午後9時30分、八王子市内の飲食店での些細な口論でした。五代目山口組宅見組幸田組の組員2名が、二率会系西山組の組員3名と口論となりました。西山組の組員らは、この口論を一旦は収め、八王子市南町のマンション3階にある二率会の組事務所へと引き上げました。

しかし、事態はこれで収まりませんでした。日付が変わった2月15日午前1時頃、幸田組の組員2名が西山組の組員らを追って、彼らが引き上げた組事務所に乗り込みました。そこで待ち受けていたのは、二率会の組員たちによる襲撃でした。幸田組の組員2名は、組事務所内で包丁で腹や胸などを複数箇所刺され、無残にも殺害されてしまったのです。

抗争の激化

この事件をきっかけに、山口組組員による二率会への報復攻撃が開始されます。それは凄惨な抗争の幕開けでした。

2月16日：宅見組組員が八王子市横山町にある二率会所有のビルに銃弾5、6発を撃ち込み、警察に逮捕。
2月17日：山口組若頭・宅見勝をはじめとする山口組組員が、2月15日に殺害された幸田組組員の葬儀に参列するため八王子市に集結。警視庁は警察官400人を動員し、厳戒態勢を敷きました。同日、東京都杉並区荻窪にあるアメリカ人女性の住むマンションに銃弾が撃ち込まれる事件が発生。この部屋には、1989年9月まで二率会系の組事務所が置かれていました。さらに、八王子市小門町の二率会八王子一家組事務所や、八王子市高尾町の二率会系組長宅、八王子市八幡町の二率会系組事務所にも銃弾が撃ち込まれ、警戒中の警察車両にまで銃弾が命中しました。
2月18日：宅見組組員が武蔵野市の二率会系組事務所に銃弾3発を撃ち込み、警察に逮捕。
2月19日：山口組系組員2名が八王子市横山町の二率会八王子一家総長宅前の街頭宣伝車に発砲し、警察に逮捕。
* 2月20日：北海道旭川市で、山口組系関保連合の組員が二率会系藤田組の幹部を至近距離から拳銃で銃撃し、殺害。また、八王子市明神町では、山口組系組員が2トントラックで二率会系組事務所の隣のビルに突っ込む事件が発生（目標を誤認）。さらに、八王子市小門町では、山口組系組員2名がトラックに乗って二率会組長宅に突っ込み、銃弾を撃ち込む事件も発生しました。相模原市では、二率会系組長宅の2階に銃弾が撃ち込まれる事件も発生。

警察の対応

2月22日、警視庁は警備部、防犯部、機動隊を含め1200人の警察官を動員。捜査四課は、八王子市を中心に約150人の山口組組員が潜伏しているとみていました。その後、警視庁は捜査員80人を大阪市に派遣し、宅見組組事務所や宅見組幹部宅などを家宅捜索しました。

抗争の終結

最終的に、山口組組員は二率会系の組事務所に対し、20回近い銃撃を行いました。

2月24日、東亜友愛事業組合・沖田守弘理事長と双愛会・石井義雄会長、そして二率会の幹部が神戸市の山口組本部を訪れ、山口組との和解交渉を行いました。

2月25日、山口組本部において、二率会の宮本高三会長と幹部が宅見勝に対し、2月15日に発生した二率会系西山組組員による宅見組幸田組組員殺害事件を謝罪。山口組と二率会は、条件なしの五分で和解しました。手打ち式などは行われず、抗争は終結しました。

抗争終結後、警視庁は捜査四課に山口組対策班と発砲事件対策班の2つの特別専従班を設置し、今後の対策を強化しました。

八王子抗争は、暴力団抗争の激化とその終結、そして警察の組織的な対応を示す事例として、記憶されることとなりました。

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