八部衆

八部衆（はちぶしゅう）とは

八部衆、もしくは天龍八部衆は、仏教における八つの尊格の集合体であり、仏法を守護する護法善神として奉じられています。この八部衆は、古代インドで信仰されていた鬼神、戦闘神、音楽神、動物神などが仏教徒となり、その地位を得たとされています。釈迦如来の信徒である十大弟子とともに、八部衆は仏教の教義を守る重要な存在として位置づけられています。

八部衆の構成

八部衆という言葉は、「八つの種族」を意味しており、主に以下の八つの神々が含まれます。
1. 天衆（テンスチュウ）
2. 龍衆（リュウシュウ）
3. 夜叉衆（ヤシャシュウ）
4. 乾闥婆衆（ケンダツバシュウ）
5. 阿修羅衆（アシュラシュウ）
6. 迦楼羅衆（カロシュウ）
7. 緊那羅衆（キンナラシュウ）
8. 摩睺羅伽衆（マゴラガシュウ）

ただし、これらの名称は奈良・興福寺の八部衆像においては異なり、寺伝に基づいて五部浄、沙羯羅、鳩槃荼、乾闥婆、阿修羅、迦楼羅、緊那羅、畢婆迦羅と呼ばれています。これらの八部衆と似た名称の八部鬼衆も存在しますが、それぞれ異なる概念として理解されています。

八部衆の神々

天（Deva）

天部の神々には、梵天や帝釈天が含まれ、一般に「天」と呼ばれる存在です。彼らは光明、自然、清浄性、自在性を象徴し、天地を支配するとされています。

龍（Naga）

龍は水の神格化であり、雨や雲をもたらす存在として崇拝されています。釈尊の誕生時には、龍王がその周囲に水を灌ぎました。

夜叉（Yaksa）

悪鬼神として知られる夜叉は、仏教において善神に変貌し、護法の役割を果たします。

乾闔婆（Gandharva）

音楽と香を象徴する神々で、特に帝釈天の音楽神として知られています。

阿修羅（Asura）

古代インドの戦闘神であり、太陽神の起源を持つと考えられています。三面六臂の姿で表現されることが多いです。

迦楼羅（Garuda）

鳥の姿を持つ神格化された存在で、特に龍を食べるという伝説が伝わっています。

緊那羅（Kimnara）

音楽の神であり、半人半獣の姿で描かれることもあります。美しい声で歌う存在として崇められています。

摩睺羅伽（Mahoraga）

緊那羅と共に音楽神として知られ、人間の身体を持ちつつ、蛇の頭を持った神格化された存在です。

興福寺の八部衆像

奈良の興福寺にある八部衆の像は、奈良時代に制作された国宝です。これらの像は、干漆造という手法で作られ、軽量のため多くの火災から生き残りました。この八部衆像は、釈迦や十大弟子と共に信仰の対象となり、日本における仏教美術の代表例の一つとされています。精彩あふれる造形と、それぞれの神々の特性が見事に表現されています。

このように八部衆は、仏教信仰において非常に重要な役割を担っています。その神々の存在は、様々な文化的な側面からも探求され続けており、今後もその研究は続いていくことでしょう。

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