八重山 (敷設艦)

八重山（やえやま）

日本海軍の小型敷設艦「八重山」は、1932年に竣工し、太平洋戦争中に活躍した艦艇である。この艦は、日本海軍において初めて全面的に電気溶接法が用いられた軍艦として、特筆すべき存在であった。艦名は沖縄県の八重山列島に由来する。

概要

「八重山」は、1932年8月に完成し、日本海軍初の全電気溶接艦の名を持つ。その任務は、主に機雷の敷設や船団護衛で、太平洋戦争開戦時は第三艦隊に属していた。1942年からは第三南遣艦隊に配属され、フィリピンや台湾方面での活動を行ったが、1944年9月24日に米軍の攻撃を受けて沈没した。

計画と艦型

1927年度に計画された「八重山」は、もともと16200トン型敷設艦を12隻整備する見込みであったが、予算制約により本艦が唯一の完成艇となった。艦型は小型かつ浅喫水で、主に前進基地への迅速な進出を目的としている。計画速力は20ノットであり、作戦行動のための設計が行われた。

技術的特性

「八重山」は、機雷185個を搭載可能で、機雷庫からの昇降機構を持っている。艦橋は駆逐艦に似た設計で、12cmの高角砲を2門装備し、防御力と火力を兼ね備えていた。電気溶接技術の導入が成功し、次世代の艦艇設計に影響を与えることとなった。特に本艦の電気溶接技術は、艦船のトン数制限への対応策としても重要であった。

改装と性能改善

「八重山」は、友鶴事件に伴う性能改善工事を実施。バラストキールの設置や上部重量の軽減が行われ、艦の強度と安定性が向上した。また、艦体の補強工事も実施されており、最終的には基準排水量が増加した。一方で、艤装の簡素化や艦橋の設計変更も行われた。

太平洋戦争での役割

開戦後、「八重山」は比島方面での護衛任務や機雷敷設を行った。特に1941年12月8日には、スリガオ海峡で機雷敷設を実施し、アメリカ艦船の進撃を阻止する重要な任務を果たした。戦局の激化に伴い、艦の兵装も増強され、25mm機銃や爆雷投射機の増備が行われた。

戦後の運命

しかし、1944年9月24日、ミンドロ島南端で米軍艦載機の攻撃を受けて沈没した。「八重山」の沈没後、生存者86名はマニラの海軍陸戦隊に編入された。この艦艇は1944年11月10日に除籍され、日本海軍の歴史に名を刻むこととなった。

歴代艦長

歴代の艦長には、穂積龍雄、中西核、久保九次、津田源助を含む多くの提督が名を連ね、その指揮の下で艦は運用されていた。

まとめ

「八重山」はその設計や技術面において日本海軍の礎を築く艦艇であり、第二次世界大戦においては重要な役割を果たした。沈没という悲劇的な最期を迎えたが、その業績は今も語り継がれている。

もう一度検索