ミンドロ島

ミンドロ島（Mindoro）

フィリピン共和国に属し、同国で7番目の大きさを誇る島です。その面積はおよそ9,735平方キロメートルに及びます。

地理

ミンドロ島はフィリピン諸島の中央部に位置しています。地理的には、北東にルソン島（ベルデ島水路を隔てて）、南西にパラワン島（ミンドロ海峡を挟んで）、そして南東にはセミララ諸島を挟んでパナイ島が位置しています。島の西側は広大な南シナ海に面しており、東側はフィリピン国内の内海であるシブヤン海に接しています。島の北西沖には、カラヴィテ水路を隔ててルバング島などからなるルバング諸島が点在しています。

島の中央部には標高2,500メートルを超える山脈が南北に走り、ミンドロ島を東西に分断しています。この山脈により島全体が山がちな地形となっており、特に西部に位置するオクシデンタル・ミンドロ州では、険しい地形が交通の不便さの一因となっています。

歴史

ミンドロ島は古くから知られていた島であり、古くは、中国の商人たちがこの島を『マイ（Ma-I、摩逸）』と呼んでいました。後に到来したスペイン人は、島に金鉱脈があると考え、『ミナ・デ・オーロ（Mina de Oro、金鉱）』と名付けました。このスペイン語名が、現在のミンドロという名の由来となったと言われています。

太平洋戦争中、ミンドロ島は一時期、日本軍に占領されていました。しかし、1944年12月15日、ルソン島奪還の足がかりとするため、アメリカ軍がミンドロ島への上陸作戦を強行しました。これにより、島は激しい戦火に見舞われることとなります。日本海軍は上陸した米軍に対し打撃を与えるべく、礼号作戦を発動。7隻からなる挺身部隊がマンガリン湾に突入し、米軍に被害を与えた後に離脱しました。この作戦は太平洋戦争における日本軍の最後の勝利とされていますが、全体の戦況に与える影響は限定的でした。ミンドロ島に展開していた日本軍部隊の多くは山岳部へ敗走し、そこで飢餓や疫病、さらには地元ゲリラとの戦闘により多くの犠牲者を出しました。

作家の大岡昇平氏は、ミンドロ島でアメリカ軍の捕虜となり、この島での体験をもとに数々の著名な戦記小説を執筆しています。終戦後も、1956年には4人の残留日本兵がミンドロ島から無事帰国したことが記録されています。

比較的新しい出来事としては、2022年に中華人民共和国が打ち上げた宇宙ステーション運搬ロケット「長征5号B」の残骸の一部（推定約100キログラム）が島の沖合に落下し、現地の漁業者によって発見されるという出来事がありました。

行政区分

ミンドロ島はかつて（1921年から1950年まで）一つの州として管理されていました。しかし現在では、島を南北に走る山脈を境界として、西側のオクシデンタル・ミンドロ州（Occidental Mindoro）と東側のオリエンタル・ミンドロ州（Oriental Mindoro）の二つの州に分割されています。

経済

ミンドロ島の経済活動の大部分は農業に依存しています。主要な作物として米やトウモロコシといった穀物栽培が行われています。また、シトラス類、バナナ、ランサ、ランブータンなど、非常に多種類の果物が栽培されているのも特徴です。ココナツを中心に、サトウキビやピーナツといった換金作物のプランテーション農業も盛んです。農業以外では、ナマズ、サバヒー、ティラピアなどを養殖する漁業や、牧畜、家禽の育成も地域の重要な産業です。さらに、林業や、大理石および銅の採掘といった鉱業も行われています。

近年では観光業も大きな収益をもたらす産業へと成長しています。島の主要な観光地としては、豊かな海洋生物で知られるアポ・リーフ国立公園、歴史的背景を持つルバング島、そして島の東海岸に広がるビーチリゾートエリア（特にプエルト・ガレラやサバン・ビーチ）、さらにトレッキングなどが楽しめるハルコン山などが挙げられます。

住民と文化

ミンドロ島の主要な住民はタガログ人です。しかし、島の中央山岳部には、八つの部族から構成される少数民族であるマンニャン族（Mangyan）が古くから暮らしています。

言語に関しては、主にタガログ語が話されていますが、ミンドロ島のタガログ語は、南に隣接するビサヤ諸島の諸語（ビサヤ語）や、中央山岳部のマンニャン族が話す独自の言語の影響を強く受けた方言が特徴です。プエルト・ガレラや州都カラパン市のような都市部周辺では、共通語であるフィリピン語や、英語が混ざったマニラ首都圏のタガログ語であるタグリッシュも話されています。ビサヤ語やマンニャン諸語も依然として多くの話者が存在します。この他、ルソン島北部のイロカノ語や、英語、福建語、わずかにスペイン語といった外国語を話す人々も見られます。

宗教の主流はキリスト教、特にローマ・カトリックです。しかし、先住民であるマンニャン族のコミュニティでは、古来からのアニミズム信仰が根付いています。

交通

島への主要な交通手段の一つとして、西ミンドロ州のサンノゼにあるフィリピン・サンノゼ空港があります。

その他

ミンドロ島は、フィリピンの国民的シンボルの一つである小型水牛「タマラウ（Tamaraw）」の唯一の生息地として知られています。カラバオと呼ばれる一般的な水牛と同様にウシ亜科に分類されますが、タマラウはミンドロ島の固有種であり、残念ながら現在は絶滅の危機に瀕しています。かつて日本のトヨタ自動車がフィリピンで販売していたバンに「タマラウ」と名付け、タクシーなどで広く使われたほど、この動物はフィリピン国内で親しまれていました。

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