公廨

公廨（くがい/くげ）について

公廨とは、もともとは官衙の建物自体を指す言葉でした。しかし、律令制の時代になると、その意味合いは変化し、官衙に保管されている収蔵品や、官衙で使用する用度品などを指すようになりました。さらに時代が進むにつれて、これらの収蔵品や用度品を管理・運用する役割を担っていた官人、特に地方の国司に対する給与そのものを指す言葉へと変化していきました。

公廨の財源

公廨の主な財源としては、特定の田地からの収入や、出挙と呼ばれる利子付きの貸付制度の運用によって得られる利益が挙げられます。これらの財源となる田地は公廨田と呼ばれ、そこから収穫される米や稲は公廨稲、また、金銭は公廨銭と呼ばれていました。これらの財源は、官衙の経費や官人の給与として用いられました。

公廨制度の変遷

延暦17年（796年）には、公廨を正税（国の税収）と混合し、そこから得られる利益の一部を公廨の代用としようとする試みがありました。しかし、この試みはわずか2年後には事実上旧制度に戻され、公廨制度は存続することになりました。

その後、延暦25年（804年）には、新任の国司に対して、公廨稲に相当する官稲を貸し与え、それを元に出挙などの運用を行い収入を得ることが認められました。この措置によって、公廨は事実上復活し、国司の給与制度としてより明確に位置づけられることとなりました。この頃から、公廨はもっぱら国司の給与制度を意味する言葉として使われるようになりました。

公廨制度の意義

公廨制度は、律令制における地方官僚である国司の生活を支える上で重要な役割を果たしました。また、単なる給与制度にとどまらず、地方財政の運営や地方経済の活性化にも間接的に寄与しました。国司は公廨を運用することで、地方における権力基盤を強化し、地方行政を円滑に進めることができたと言えるでしょう。

まとめ

公廨は、律令制という古代日本の社会システムにおいて、官衙の維持管理から官人の給与という重要な役割を担っていました。その変遷を通して、当時の行政制度や官僚のあり方を理解する上で欠かせない制度であったと言えるでしょう。

参考文献

宮本救「公廨」（『国史大辞典 4』吉川弘文館、1984年） ISBN 978-4-642-00504-3
奥野中彦「公廨」（『平安時代史事典』角川書店、1994年） ISBN 978-4-04-031700-7
「類聚三代格」『国史大系 第12巻』経済雑誌社、1900年、623 - 629頁。doi:10.11501/991102。https://dl.ndl.go.jp/pid/991102/1/325。
「類聚三代格」『国史大系 第25巻 新訂増補』国史大系刊行会、1936年、264 - 269頁。doi:10.11501/3431640。https://dl.ndl.go.jp/pid/3431640/1/165。

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