公弁法親王

公弁法親王（こうべんほっしんのう）

公弁法親王は、寛文9年（1669年）に後西天皇の第六皇子として誕生しました。幼名は貴宮、諱は秀憲といい、母は梅小路定子です。幼少の頃から聡明で、早くに出家し、親王宣下を受け法親王となりました。法名は脩礼、玄堂と号し、隠居後は大明院と称しました。

天台宗の要職を歴任

公弁法親王は、毘沙門堂門跡の門主を務めたほか、日光山（東照宮、輪王寺門跡）、東叡山寛永寺貫首、東叡山輪王寺門跡、比叡山延暦寺天台座主という天台宗の重要な役職を兼任しました。特に、輪王寺門跡としては関東に下向し、東叡山を中心に活動しました。また、一品、准三宮という高い位階にも叙せられ、天台宗における重鎮としての地位を確立しました。

天台教学の発展への貢献

公弁法親王は、天台教学の整備に尽力し、論議書の編纂や勧学寮の整備振興に力を注ぎました。特に、公弁の命によって編集された『台宗二百題』は、今日でも天台宗の基礎文献として重用されています。また、真言立川流を邪法として弾圧するなど、教義の純粋性を守るための活動も行いました。

日光山の興隆と産業振興

公弁法親王は、日光山の興隆にも大きく貢献しました。日光山麓の村々の産業振興をすすめ、漆の植樹を奨励しました。その結果、日光彫、紅葉塗、日光春慶塗などの漆器の製造技術が確立し、産業化が進みました。また、上野大仏の仏殿建立や、日光八景の選定など、文化的な事業も積極的に行いました。

赤穂事件との関わり

公弁法親王は、赤穂事件において、5代将軍・徳川綱吉に赤穂浪士の切腹を促したとする逸話が残っています。綱吉の相談相手として、処断に苦慮する綱吉に助言を与えたとされています。ただし、実際には浪士の助命を求めることはなく、浪士の忠義を称える一方で、切腹をさせることでその志を後世に残すべきだと考えたとも言われています。

文化的な逸話

公弁法親王は、文化的な逸話も多く残しています。寛永寺住職時代には、上野の森の鶯の鳴き声が悪いことを嘆き、京都から美声の鶯を3500羽も取り寄せ放鳥しました。また、深大寺の蕎麦を気に入り、献上蕎麦として広めたとされています。これらの逸話からも、公弁法親王が文化や食にも深い関心を持っていたことが伺えます。

その他の逸話

その他にも、根岸の里の老舗である「笹乃雪の豆富」や「竹隆庵のこごめ大福」など、多くの逸話が残されています。

登場作品

公弁法親王は、以下の作品にも登場しています。

大忠臣蔵（1971年、NETテレビ、演：東千代之介）
忠臣蔵（1985年、日本テレビ、演：上原謙）
* 元禄繚乱（1999年、NHK、演：3代目中村橋之助）


公弁法親王は、天台宗の僧侶として、また文化人として、多方面で活躍した人物でした。その功績は、今日においても高く評価されています。

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