日光彫

日光彫とは

日光彫（にっこうぼり）は、栃木県日光市で作られる木彫りの工芸品です。主な材料として、乾燥させたトチノキ、ホオノキ、カツラなどが使われます。その特徴は、独特の「ひっかき刀」と呼ばれる彫刻刀を使用し、木地に模様を彫り込む技法にあります。

製法

材料

かつては栃木県産のトチノキが使われていましたが、現在では北海道産のカツラが主流です。近年では合板も使用されています。これらの木材は、貯木場で柾目に製材され、自然乾燥と電気乾燥を経て、日光彫の材料として使われます。

成形

木材は、墨付けをして切断加工された後、再度電気乾燥されます。その後、機械を用いて適切な形に成形されます。

彫り

「ひっかき刀（日光三角刀）」という特殊な彫刻刀を使って、木地に模様を彫り込みます。ひっかき彫、沈み彫、浮かし彫など、様々な技法が用いられます。このひっかき刀は、他の彫刻のように複数の刃物を使い分ける必要がなく、工程を簡略化できる道具です。彫られる模様は、菊、桜、梅、ニッコウキスゲなど、日本の自然をモチーフにしたものが多いです。また、平面部分には、塗料の乗りを良くするために「星打ち」という加工が施されます。

塗り

昭和初期には「日光朱堆塗」という技法が使われていましたが、現在では漆は使われず、ウレタン塗料が主流です。

歴史

起源

1878年（明治11年）に日光を訪れたイザベラ・バードは、その手記の中で、日光の商店で様々な土産物が売られている様子を記録しています。その中には、春慶塗やその他の塗り物も含まれており、当時から日光で工芸品が作られていたことがわかります。

軽井沢彫の誕生

1908年（明治41年）には、日光彫の職人が長野県軽井沢町に移り住み、軽井沢彫が誕生しました。これは、日光彫の技術が他の地域にも影響を与えたことを示しています。

近年の動向

日光の工芸品には、日光堆朱塗や日光盆など歴史のあるものもありますが、日光彫は比較的始めやすく、特にシニア層に人気があります。また、2014年には熊野筆とのコラボレーション作品も登場するなど、新しい試みも行われています。

まとめ

日光彫は、その歴史と独特の技法によって、日本の伝統工芸として重要な位置を占めています。材料の選定から、彫り、塗りまで、職人の手仕事によって丁寧に作られる日光彫は、その美しさで多くの人々を魅了しています。

参考資料

栃木県の伝統工芸 日光彫
イザベラ・バード著、時岡敬子訳『イザベラ・バードの日本紀行』（講談社）
晃山小誌　鬼平金四郎　明治26年6月15日出版御届

関連項目

日光東照宮
徳川家光
鎌倉彫
* とちぎの百様

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