公衆衛生大学院(School of Public Health, SPH)は、
公衆衛生の実践においてリーダーシップを発揮できる専門家を育成するプロフェッショナルスクールです。ここでは、
公衆衛生に関する研究と専門的な活動が重要な役割を果たします。
公衆衛生大学院は、人々の健康を守り、増進させるための知識、スキル、倫理観を学生に提供します。
公衆衛生とは、「組織的な社会活動を通じて、疾病を予防し、寿命を延ばし、身体的および精神的な健康を増進する科学と技術」と定義されます。
公衆衛生の目的は、人々の健康と
福祉を保護することであり、そのために、集団の健康を妨げる根本的な原因を科学的に調査し、得られたエビデンスに基づいて介入を行います。
大学基準協会によると、
公衆衛生大学院の共通の使命は、国内外の行政機関、医療機関、
福祉機関、
環境機関、教育研究機関、民間組織など、さまざまな分野で求められる
公衆衛生上の課題の解決に貢献できる人材を育成することです。これらの人材は、専門的な知識と技能だけでなく、広い視野と高い
職業倫理を備えている必要があります。
公衆衛生大学院では、主に
公衆衛生学修士(
Master of Public Health, MPH)の
学位が授与されます。一部の
大学院では、
公衆衛生学博士(Doctor of Public Health, DrPH)も取得できます。さらに、
公衆衛生における科学的・学術的な研究を目的とした修士(Master of Science, MSc)や博士(Doctor of Philosophy, PhD)課程を併設している場合もあります。
教育領域
公衆衛生大学院では、以下の5つのコア領域を中心に教育が行われます。
疫学
生物統計学
保健医療政策・管理学
環境保健学
健康行動学
これらの領域は、公衆衛生の専門家として活動するために不可欠な知識とスキルを提供します。
疫学と統計学は、量的研究の基礎となる重要な方法論であり、公衆衛生の中核をなす分野です。
行動科学
行動科学は、健康と病気に関する知識を研究し、健康増進、疾病予防、治療、リハビリテーションに応用する学際的な分野です。
欧米では、19世紀末から20世紀初頭にかけて公衆衛生大学院が設立されました。有名な大学院には、英国のロンドン大学衛生熱帯医学大学院、米国のジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院、ハーバード大学公衆衛生大学院などがあります。特にジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院は、世界最大規模の公衆衛生大学院として知られています。
米国の公衆衛生教育認証機関であるCEPHは、多数の公衆衛生大学院とプログラムを認証しており、欧州ではASPHERが公衆衛生教育の標準化に取り組んでいます。
設立背景と現状
日本では、公衆衛生教育は長らく医学部を中心とした学部教育や大学院の博士課程で行われてきました。しかし、公衆衛生の現代的な課題に対応するためには、医学だけでなく、学際的なアプローチが不可欠であるとの認識が高まり、独立した大学院として公衆衛生大学院が設立されるようになりました。
専門職大学院制度の導入により、公衆衛生大学院は、高度な専門知識と実践的な能力を持つ人材を育成する機関として位置づけられています。
日本における最初の公衆衛生大学院は、京都大学大学院医学研究科に設置された社会健康医学系専攻です。現在、日本では複数の公衆衛生大学院が、専門職大学院として認定され、MPHの学位を授与しています。
国立保健医療科学院
国立保健医療科学院は、公衆衛生技術者の養成訓練機関として長い歴史を持つ機関です。ここでは、専門課程を修了すると「Certified Public Health Professional (CPHP)」の資格が与えられます。以前はMPHの称号を授与していましたが、教育機関としての性質の違いから、現在は名称が変更されています。
MPH教育校一覧
公衆衛生大学院プログラム校連絡会議は、日本におけるMPH教育を行う大学院の任意団体であり、公衆衛生大学院とプログラム校が連携して、MPH教育の質の向上に取り組んでいます。
公衆衛生専門職大学院連絡協議会は、大学基準協会の認証を受けた公衆衛生大学院が加盟する協議会であり、教育の連携や情報共有を進めています。
脚注
この記事は、公衆衛生大学院に関する基本的な情報を提供することを目的としています。
関連項目
公衆衛生
大学院
専門職大学院
高度専門職業人
Master of Public Health (MPH)
外部リンク
文部科学省 専門職大学院一覧
大学基準協会
*
公衆衛生専門職大学院連絡協議会