六 (国)

六（りく）

六は、周の時代に淮河流域に存在した諸侯国です。その起源は、皋陶（こうよう）の後裔であるとされています。皋陶は、古代中国の伝説的な人物で、司法官として知られています。

西周時代の六

西周時代には、六は「録」または「録伯」と呼ばれていたと考えられています。これは、西周の青銅器の銘文に「録」や「録伯」という記述が見られることから推測されています。これらの銘文には、周の王が録伯に淮夷（わいい）に対する防衛警備を命じたという史実が記録されています。

春秋時代の六

春秋時代に入ると、楚が強大になり、六は楚の付庸国（属国）となりました。これは、六が楚の勢力下に入り、独立した国としての力を失ったことを意味します。

「春秋」という歴史書には、紀元前622年に六が楚によって滅ぼされたという記述があります。また、「春秋左伝」という注釈書には、この滅亡の原因として、六が楚に背き、東夷（とうい）と親交を結んだことが挙げられています。この時、楚は六と同時に、現在の河南省信陽市固始県にあった蓼（りょう）という国も滅ぼしています。この二国の滅亡は、魯の大夫である臧辰（ぞうしん、臧文仲とも）に、皋陶の子孫が衰退してしまったと嘆かせたと言われています。

歴史書の記述の差異

ここで注意すべき点があります。『史記』という歴史書には、六の滅亡に関する記述が「春秋」と異なっているのです。『史記』の「十二諸侯年表」には、楚の成王26年に「六・英を滅ぼす」とあり、穆王4年には「六・蓼を滅ぼす」とあります。一方、『春秋』の記述では、楚の穆王が六と蓼を滅ぼしたとされています。

さらに、『史記』の「楚世家」には、成王26年の記述として、英を滅ぼしたとしか書かれておらず、六を滅ぼしたという記述はありません。このように、歴史書によって記述が異なるため、六の滅亡に関する正確な年代や経緯については、複数の情報を照らし合わせながら慎重に考察する必要があります。

まとめ

六は、周の時代から春秋時代にかけて存在した諸侯国であり、その歴史は、周辺の国々との関係の中で変動しました。西周時代には周王に仕え、淮夷の防衛にあたっていましたが、春秋時代には楚の勢力下に入り、最終的には滅亡しました。歴史書の記述には差異があるものの、六の興亡は、古代中国の国際関係や勢力変動を理解する上で重要な事例と言えるでしょう。

もう一度検索