六人部是香

六人部是香（むとべ よしか）

六人部是香は、寛政10年4月22日（1798年6月6日）に生まれ、文久3年11月28日（1864年1月7日）に没した、幕末の国学者です。山城国乙訓郡向日神社の神職・六人部忠篤の子として生まれました。叔父には同じく神職の六人部節香がいます。幼名は惟篤で、縫殿、美濃守、宿禰などの通称を持ち、葵渓、一翁、篶舎といった号を用いていました。生年については1806年説もありますが、享年66歳であったとされています。

学問と信仰

是香は、国学者である平田篤胤に師事し、その教えを深く学びました。その後、郷里の山城国に戻り、私塾を開いて後進の指導にあたりました。是香の学問的特徴として、篤胤の著書『幽顕弁』をさらに発展させ、産土信仰や顕幽順考に関する独自の論を展開したことが挙げられます。産土信仰とは、人々が生まれた土地の神を崇拝する信仰であり、顕幽順考とは、この世とあの世の関係を考察する思想です。これらの論は、当時の神道研究に大きな影響を与えました。

著作

是香は、多数の著作を残しており、その内容は古代史、神道、歌論など多岐にわたります。主な著作には以下のようなものがあります。

歴史・考証
太古史（十巻）
太古史考証（十巻）
上古史（十六巻）
上古史考証（十六巻）
日向國神蹟考

神道
古道本義傳（廿巻）
古傳本辞録并徴
日中神事記（二巻）
顕幽順考論（五巻）
順考神事傳（三十巻）
順考三大論（五巻）
天津眞保良末考
神於呂志神歌考
神習社置文
稲荷神社考附釈
大祓詞天津菅麻（五巻）
復古大祓祭典式（一巻）
禳疫祓祭典式
産須那社古傳抄
産須那社古傳抄広義（四巻）

思想
道の一言
道の一言講義
三教本論（七巻）
挫魔概論（十巻）

その他
龍田考（一巻）
布留野道別
志豆多巻（三巻）
日中祝詞記（一帖）

歌論
詠歌本論（三巻）
新撰萬葉集玉小菅（五巻）
長歌玉琴
小倉百首峯紅葉（五巻）
萬葉集要解（三十巻）
長謌篶廼木綿垂
眞帆能追風（一巻）

日記
村雲日記

これらの著作から、是香が古代史や神道に関する深い知識を持ち、独自の思想を展開していたことがわかります。また、歌論にも精通しており、多才な人物であったと言えるでしょう。

まとめ

六人部是香は、幕末の動乱期に、国学の研究を通じて日本の伝統文化を深く探求した人物でした。平田篤胤の思想を受け継ぎながらも、独自の視点から産土信仰や顕幽順考を論じ、後世に大きな影響を与えました。彼の著作は、現代においても貴重な研究資料として重要視されています。

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