六角紫水

六角紫水：日本漆工芸の巨匠

六角紫水（ろっかく しすい）は1867年4月24日に生まれた日本の著名な漆工芸家です。彼は漆工芸界の先駆者として知られ、国内外での活動において数多くの業績を残しました。幼少期は藤岡家に生まれ、後に注多良と改名しましたが、彼の功績はその名を超え、今日においても漆工芸の重要な位置を占めています。

経歴

紫水は広島県佐伯郡大原村（現・江田島市大柿町大原）で育ちました。1883年に広島師範学校を卒業後、母校の小学校で教員としてのキャリアを始めました。教育の現場での経験を経て、東京美術学校（現在の東京芸術大学）に入学し、漆工科の一期生として学びました。1893年には卒業と同時に同校の漆芸科助教授に就任し、岡倉天心と共に国内の古美術研究に尽力しました。

1898年には日本美術院の設立に関与し、岡倉天心に随伴して渡米。ボストン美術館やメトロポリタン美術館での勤務を通じて、東洋美術品の整理に従事しました。さらに1908年にはヨーロッパへ渡り、ロンドンやパリ、ドイツを巡って日本美術に関する知見を広げました。帰国後は母校で後進を指導しながら、古典技法の研究と応用を進め、数々の作品を発表しました。

受賞・栄典

彼の業績は高く評価され、1925年にはパリ万国博覧会で受賞。また、1930年の第11回帝展においては、漆器作品「暁天吼号之図」が帝国美術院賞を手にしました。これらの受賞歴は、彼の技術と創造性を物語るものであり、後世に残る重要な作品となっています。

研究内容・業績

六角紫水は漆芸制作だけでなく、東京美術学校での教鞭を通じて日本の漆工芸界に多大な影響を与えました。特に、朝鮮半島で発掘された楽浪漆器に着目し、その研究を進めたことが彼の名を高める要因となりました。文化財保護にも貢献し、中尊寺金色堂や厳島神社社殿の修復、古社寺文化財の調査など、多岐にわたる活動を行いました。そして、白漆の発明も彼の大きな業績となっています。

代表作

彼の作品には「菊蒔絵螺鈿棚」があり、これは木製品に蒔絵が施された特徴的な作品です。1894年から1903年にかけて、川之邊一朝（蒔絵）との共作として完成しました。この作品は三の丸尚蔵館に所蔵され、2024年度には重要文化財に指定される予定です。また、キリンビールのラベルに使われている麒麟の図案も紫水のデザインによるものとされています。

著書

紫水は著作活動も行っており、1936年には『考古学講座4』漆工史を、1960年には『東洋漆工史』を出版しました。

参考書籍・資料

彼の生涯や業績について詳しい研究がなされており、特に村野夏生の『漆の精：六角紫水伝』や、樋口豊郎編の『楽浪漆器』などが参考文献として知られています。彼の影響を受けた後の漆工芸家たちにとっても、紫水の研究や作品は重要な指標となっています。

六角紫水の業績は今日でも受け継がれ、彼の存在は日本の漆工芸界において忘れてはならない重要な名字となっています。

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