共同飲食

共同飲食とは

共同飲食とは、特定の集団が同じ飲食物を共にすることを指す言葉です。家族、親族、地域社会、職場、趣味の仲間など、様々な人々が集まって飲食を共にする行為を広く指します。共食、共飲共食とも呼ばれ、特に神道においては、神を崇拝する集団が祭りの後などに神饌や供物を共同で飲食する行為を指し、神人共食という言葉もあります。一方、一人で食事をすることを「孤食」と呼び、近年では家族がバラバラに食事をする「個食」も問題視されています。

歴史

人類は古来より、食事を誰かと共にすることが一般的でした。共食は家族からより大きな共同体へと広がり、食物を分け合うための儀礼やタブーが生まれ、テーブルマナーの起源となりました。ユダヤ教の会食儀礼がキリスト教の聖餐の儀式の元となり、古代ローマやギリシャでも共食は共同体の一員としての義務とされていました。

古代日本では、氏神を祀る氏人が同じ火で調理した食事を共にすることで、神と人、人と人との一体化を図りました。中世では、宮座と呼ばれる組織が祭りでの直会や生饌の分配を通じて、神からの加護を分かち合いました。武士団や農村でも、団結を深めるために神饌や神酒を共にしました。一揆の際に行われた一味神水の儀式もその派生と考えられます。

民俗学では、こうした共同飲食が、後に祭祀を介さない人と人との共同飲食へと発展したと考えられてきましたが、この説には批判もあり、宗教的な共同飲食と社会的な共同飲食が併存していたとする説も提唱されています。

動物行動との比較

文化人類学では、人間と動物を区別する要素の一つとして共食が挙げられます。例えば、ニワトリには食べる順位（ペッキングオーダー）があり、草食動物は同時に食事をしますが、これは共食とは異なります。彼らは敵を警戒しながら、同じ時間に食事をするだけで、食事を分け合っているわけではありません。人間のように、食事を通して親睦を深めるという行為は、他の動物には見られない特徴と言えるでしょう。

まとめ

共同飲食は、単に食事をするという行為を超え、人々の繋がりを深め、共同体を形成する上で重要な役割を果たしてきました。その歴史や文化的背景を理解することは、現代社会における食のあり方を考える上で非常に有益です。食事は、単なる栄養補給だけでなく、人間関係を築き、文化を共有する大切な機会であることを再認識する必要があります。

脚注

参考文献

赤田光男「共食」『日本歴史大事典 1』（小学館 2000年） ISBN 978-4-09-523001-6
大野啓「共同飲食」『祭・芸能・行事大辞典』（朝倉書店 2009年） ISBN 978-4-254-50013-4
渡邊欣一「共食」『日本民俗大辞典 上』（吉川弘文館 1998年） ISBN 978-4-642-01332-1

関連人物

串田修

関連項目

宴会
直会
* 聖餐

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