共和 (周)

古代中国における「共和」

「共和」とは、古代中国の周王朝において、厲王が国人の反乱により追放され、宣王が即位するまでの期間を指す言葉です。この期間は、西暦で紀元前841年から紀元前828年までとされています。

共和の成立

『史記』周本紀によると、厲王の失脚後、周定公と召の穆公の二人が政治を共同で執り行い、「共和」と称したとされています。一方、『竹書紀年』には、厲王の亡命後、「共伯和」という人物が政治を執ったとも記されています。この共伯和は、共国を領地とし、伯の爵位を持つ和という名前の人物で、衛の武公であるという説もあります。

金文資料には、「伯龢父」や「師龢父」という呼称で共伯和の存在を示すものが確認されており、周公・召公による共和よりも、共伯和による共和の方が実態に近いとする見方も有力です。

共和の特徴

この期間の特徴は、王が不在となり、有力者による合議制で国政が運営された点です。王による専制政治ではなく、複数の有力者が話し合いによって政治を進めるという点で、従来の統治体制とは大きく異なっていました。

「共和」概念の拡張

近世に入り、日本人はこの「共和」という語を、ヨーロッパの「res publica」に対応する言葉として使用するようになりました。「res publica」とは、王が国家元首ではなく、貴族や議員などの有力者の合議によって政治が行われる体制を指します。

このように、「共和」という言葉の意味は拡張され、漢字文化圏全体に広まり、一般化しました。現代ではさらに意味が拡張・普遍化し、地域や時代を問わず、世襲の国家元首が存在しない政体を「共和制」と呼ぶようになっています。

史記との関係

『史記』の十二諸侯年表は、この「共和」元年を起点として記述されています。つまり、『史記』の中で最も古い年代の記述がこの共和の時期にあたります。このことからも、共和という時代が、中国の歴史において重要な転換期であったことがわかります。

参考文献

佐藤信弥『周－理想化された古代王朝』（中公新書，2016年）
落合淳思『古代中国の虚像と実像』（講談社現代新書，2009年）

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