共通漁業政策

欧州連合の共通漁業政策：持続可能な漁業を目指して

欧州連合（EU）の共通漁業政策（Common Fisheries Policy、CFP）は、EU加盟国全体の水産資源を管理し、持続可能な漁業を確保するための包括的な政策です。EU経済全体における規模は比較的小さく、GDPに占める割合は1%未満ですが、約17万人の雇用を支え、約8万3千隻の漁船が操業しています。世界第5位の漁獲量を誇る一方、水産物貿易では赤字を抱えています。

政策の目的と歴史

ローマ条約第38条に基づき、EUは漁業に関する共通政策の必要性を認識し、CFPを策定しました。当初は自由貿易地域の設定や漁船の近代化支援などが目的でしたが、乱獲や過剰設備の問題が顕在化するにつれ、政策の見直しと強化が繰り返されてきました。リスボン条約（2009年発効）では、海洋生物資源の維持に関する権限がEUに与えられ、他の政策はEUと加盟国が共有することになりました。

政策の主要な要素

CFPは、以下の4つの主要な要素から構成されています。

1. 漁獲量の管理: 魚種別、加盟国別の漁獲可能量（TAC）を設定し、年間漁獲量を制限しています。TACの設定は、科学的知見に基づいた欧州委員会の提案と、EU理事会による決定を経て行われ、加盟国はTACを遵守する義務を負います。
2. 漁業規制: 漁獲方法、漁具の種類、漁獲サイズ、禁漁期間などの規制を設けて、資源の保護と回復を図ります。小型魚の混獲や廃棄を削減するための網目の大きさの規制なども含まれます。
3. 市場介入: 漁業従事者を市場の変動から保護するため、生産者団体を奨励し、最低価格の設定、売れ残り品の買い上げなどの財政支援を実施しています。また、水産加工業の近代化や衛生状態の改善のための支援も行っています。
4. 国際協力: EUは、国際機関や他国と協力して、漁業資源の管理や貿易に関する協定を締結しています。アフリカ諸国との漁業協定など、国際的な側面も重要な課題となっています。

水産養殖

CFPは、海洋漁業だけでなく、水産養殖も重要な対象としています。EUでは、マス、サケ、ムール貝などが主に養殖されており、EUの支援を受けて発展してきました。しかしながら、需要の不透明さや環境問題への対応が課題となっています。

政策の実施と課題

CFPの執行は加盟国政府が担いますが、EUによる検査や監視体制も整備されています。加盟国は、自国水域内だけでなく、域外での操業についてもEU規則を遵守させる責任を負っています。違反行為に対する罰則も加盟国間で調整されています。

CFPは、漁業資源の持続可能な管理、漁業従事者の生活向上、水産物の安定供給などを目指していますが、乱獲、気候変動、環境汚染など、多くの課題に直面しています。国際協力の強化、科学的知見の活用、政策の柔軟な運用などが、CFPの今後の成功に不可欠です。

脚注

（引用文献やデータソースへのリンクなどをここに挿入）

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