漁獲可能量

漁獲可能量（TAC）制度の概要

漁獲可能量（ぎょかくかのうりょう、英語: Total allowable catch、TAC）は、水産資源を持続可能に管理するために、特定の魚種ごとに捕獲できる総量を定める制度です。この制度は、倫理的かつ科学的に設計されており、漁業の持続可能性を確保することを目的としています。

TAC制度の歴史

1982年に国連で採択された国連海洋法条約は、この制度の礎となりました。日本は1983年にこの条約に署名し、1994年に発効した後、1996年に批准しました。この条約の施行によって、日本は海洋生物資源の保存と管理に関する法律であるTAC法を制定し、漁獲可能量の管理をはじめました。

国連海洋法条約とTAC法

国連海洋法条約は、沿岸国に対して排他的経済水域を設定する権利を与え、資源の利用権を認めました。一方で、各国はその水域の生物資源の保存・管理に対する責任を持つことになります。なお、TAC法は2020年に廃止され、改正漁業法に移行しています。

漁獲量管理の方法

日本では、漁獲管理のアプローチとして、以下の2つの主要な方式が用いられています。

1. 非個別割当方式（オリンピック方式）：漁獲可能量を漁業者に割り当てず、漁獲量が上限に達した時点で操業を停止します。この方式は、漁業者間での早獲り競争を生むため、資源を急速に枯渇させる危険性を伴います。
2. 個別割当方式：漁業者や漁船に漁獲量を個別に割り当てる手法で、外国では一般的です。
3. 譲渡性個別割当方式：漁獲量の余剰や不足を他の漁業者に譲渡できる制度であり、アメリカやノルウェーなどで採用されています。

日本における漁獲管理

日本のTAC制度は、初期に7種類の魚種が対象として設定され、クロマグロが追加されて8種類となりました。これらの魚種は、漁獲量が多く、国民生活に重要な影響を持つものや、資源状態が危機的で管理の必要があるものです。

対象魚種

以下の魚種が漁獲可能量の管理対象として選定されました：

• - クロマグロ
• - サンマ
• - スケトウダラ
• - マアジ
• - マイワシ
• - マサバ及びゴマサバ
• - スルメイカ
• - ズワイガニ

漁獲可能量の決定プロセス

漁獲可能量は、水産庁により、水産総合研究センターや大学、各都道府県の水産試験場の専門家によって協議されます。これにより、全国の魚種ごとの漁獲可能量が決定され、地域ごとに配分が行われます。さらに、このプロセスでは生物学的許容漁獲量（ABC）が基準に用いられ、漁業者の経営状態も考慮されます。

漁獲量の把握と情報管理

現在、漁獲量を正確に把握するために、水産庁は1997年より「漁獲管理情報処理システム」を稼動させており、主要な漁業団体や漁協と都道府県庁にデータ端末を設置しています。このシステムにより、漁獲量は電子データとして収集され、漁業情報サービスセンター（JAFIC）に蓄積され、管理されています。

結論

漁獲可能量制度は、持続可能な漁業を実現するための重要な仕組みです。適切な管理措置を講じることで、豊かな海の資源を次世代に引き継ぐことができるのです。

もう一度検索