兵隊やくざ 大脱走

『兵隊やくざ 大脱走』

『兵隊やくざ 大脱走』は、1966年11月9日に公開された日本の長編劇映画であり、大映によって製作されました。本作は、作家・有馬頼義の小説を原作とする人気シリーズ「兵隊やくざ」の一本であり、監督は田中徳三が務めています。

このシリーズの核をなすのは、勝新太郎演じる元やくざで豪放磊落な二等兵・大宮貴三郎と、田村高廣が演じるインテリでありながら大宮の破天荒さに振り回される上等兵・有田のコンビです。戦時下の過酷な状況や理不尽な軍隊組織の中で、二人がその型破りな行動や機転、そしてどこかユーモラスな掛け合いを通して、困難を乗り越えていく様が描かれます。シリーズ全体を通して、厳しい現実の中にも人間味や笑いを織り交ぜた独特のトーンが魅力となっています。

本作のタイトルに冠された「大脱走」という言葉は、物語の中心的なテーマを示唆しています。シリーズの主人公である大宮と有田が、何らかの状況から大規模な脱走を企てるか、あるいはそれに巻き込まれるストーリーが展開されると推測されます。軍隊という管理された環境からの脱出、自由への希求といったテーマが、彼らのキャラクター性を最大限に活かす形で描かれるでしょう。大宮の圧倒的な行動力と、それを冷静にサポートあるいはツッコミを入れる有田の存在が、この「大脱走」をいかにユニークで波乱に満ちたものにするのかが見どころとなります。

主要キャストには、主演の勝新太郎、田村高廣に加え、物語に彩りを添える様々なキャラクターが登場します。笹原弥生を大楠道代、青柳を成田三樹夫が演じるほか、笹原の父を南都雄二、当番兵役で芦屋雁之助、芦屋小雁の兄弟が出演するなど、多彩な顔ぶれが揃っています。さらに、黒沼軍曹に五味龍太郎、木部准尉に北城寿太郎、野辺地軍曹に千波丈太郎といったシリーズ常連ともいえる悪役や上官役の俳優たちが、大宮と有田の行く手を阻む存在として登場し、物語に緊張感と対立構造をもたらしています。その他にも、内田朝雄、仲村隆、藤山浩二、寺島雄作、伊達三郎、橋本力、木村玄、堀北幸夫、平泉征（清島見習士官役）、浜田雄史、志賀明、勝村淳、薮内武司、伴勇太郎、戸村昌子、小柳圭子、山岡鋭二郎、黒木英男、渡辺満男、大林一夫、上原寛二、松田剛武、森内一夫、竹内春義ら、当時の大映作品を支えた多数の俳優が出演し、戦時下の群像劇を織り成しています。

制作スタッフには、監督の田中徳三の下、企画を久保寺生郎、原作・有馬頼義、脚本を舟橋和郎が担当しています。撮影は武田千吉郎、録音は大角正夫、照明は古谷賢次、美術は内藤昭、音楽は鏑木創、編集は山田弘が手掛けるなど、当時の大映京都撮影所を中心とした手練れのスタッフが集結し、作品世界を構築しています。助監督を遠藤力雄、制作主任を吉岡徹が務めました。

公開当時は、市川雷蔵主演の時代劇『眠狂四郎無頼剣』と二本立てで併映されました。異色の軍隊ドラマである「兵隊やくざ」シリーズと、人気の時代劇シリーズという、対照的ながら当時の大映の看板スターを配した強力なラインナップでした。

『兵隊やくざ 大脱走』は、シリーズの魅力である勝新太郎と田村高廣の絶妙なコンビネーション、戦時下という舞台設定におけるユーモアとアクション、そして個性的な助演陣の活躍が一体となった作品であり、「兵隊やくざ」シリーズの中でも特にタイトルが内容を示唆する一本として知られています。具体的な「大脱走」の計画や実行、そしてその顛末がどのように描かれているのかが、本作の大きな焦点となります。

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