典侍

典侍（ないしのすけ/てんじ）の役割と歴史

典侍は、古代日本の律令制において内侍司の次官として置かれていた官職で、特に女官としての重要な地位を占めていました。通常「すけ」と呼ばれ、長官は尚侍が務めていましたが、後に尚侍が後宮の役割として設置されず、典侍が実質的に長官の役割を果たすこととなりました。この職位は従四位に準じた地位を持ち、多くの場合、この地位からは二、三位に昇進する者も存在しました。典侍の名前にはしばしば「藤典侍」や「源典侍」など、先代の姓や父親の職業名が含まれることが一般的でした。

古代・中世における典侍の役割

典侍の主要な職務は、天皇に常に近く侍ることでした。天皇が別殿に渡御する際には重要な役割として剣璽を捧持する任務があり、また天皇の乳母や東宮宣旨に任命されることも多かった。新帝が即位する際に剣璽を近衛次将に送ることも典侍の重要な責務の一つでありました。この際の役割は後に勾当内侍が代行するようになりました。

平安時代後期になると、摂関や大臣となる家が固定化し、一人の天皇に対する女御や更衣として正式に入内する女性が少なくなりました。そのため、典侍や掌侍を含めた女性たちが天皇の寵愛を受けて子供を産む例が多く見られるようになりました。特に後三条天皇は典侍藤原行子や掌侍平親子を寵愛し、それぞれ子供を持ちながらも正式な皇妃としては扱わないことがありました。

この現象は白河天皇や堀河[[天皇]]の時にも見られ、彼らもまた正式な妃の地位を与えずに側近の女官へと寵愛を与えました。さらに、南北朝時代から安土桃山時代にかけて、典侍となる女性は特定の公家の出身に固定化される傾向があり、財政上の理由から摂家が積極的に皇后を立てることなく、典侍が天皇の子供を授かることが一般的になりました。

江戸時代の典侍

江戸時代末期には、宮中での高級女官の最上位として位置づけられた典侍は、お清の女官として天皇の日常生活における秘書的な役割を担っていました。大典侍は女官を統括し、御所御常御殿の事務を一手に掌握していました。この時期、女御や中宮は通常一人であり、典侍は側室としての役割が強く求められました。

江戸時代に即位した天皇の生母の多くが典侍であり、出身家格は羽林家や名家の女子に限られるようになりました。定員は4名とされていましたが、病気や退任などの理由からその数が増えることも珍しくありませんでした。

明治以降の変革と典侍の廃止

幕末から明治時代にかけて、典侍は大きな変革を経験します。明治新政府は皇后の下に女官を統一し、典侍以下の女官の職責を再編しました。多くの典侍や権典侍は武家や華族の子女から選ばれるようになり、立身出世の機会が増えました。

一夫一妻制の実施により、侍妾としての役割を果たす典侍は姿を消し、最後の典侍であった竹屋津根子が任じられた後は、事務女官としての職務が存続されることとなりました。最終的に、典侍は廃止され、近代的な女官制度へと変化を遂げました。大正末期には、女官長を頂点とした新たな制度が導入され、皇太子裕仁親王によってさらなる改革が行われました。

まとめ

典侍は日本の古代から近代にかけて、時代によってその役割が変わりましたが、常に天皇に近侍し続けた重要な職位でした。後宮での権力の変遷、政局の影響などもあって、多くの典侍が天皇の子を生む存在となり、歴史的な背景を持つこの役職の意義を考えることは、日本史を理解する上で非常に示唆に富んだものと言えるでしょう。

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