兼子仁

兼子仁（かねこ まさし）は、1935年2月28日生まれの日本の法学者です。彼の専門分野は多岐にわたり、フランス行政法、地方自治法、情報法、教育法といった領域で深い知識と研究実績を有しています。東京大学で法学博士号を取得後、東京都立大学で長年にわたり教鞭をとり、名誉教授の称号を授与されました。また、川崎市市民オンブズマン代表や神奈川県個人情報保護審議会会長を歴任するなど、実務分野でもその手腕を発揮しました。

家族構成

兼子氏は、法学者の家系に生まれました。祖父は民事訴訟法学者で中央大学総長、東京帝国大学教授を務めた加藤正治、父は同じく民事訴訟法学者で東京大学教授の兼子一です。叔父には心理学者で早稲田大学生産研教授を務めた兼子宙がおり、義弟には民事訴訟法学者で駿河台大学学長、元法制審議会会長の一橋大学名誉教授竹下守夫がいます。このような環境で育ったことが、彼の法学への深い関心と理解を育んだと言えるでしょう。

略歴

1957年に東京大学法学部を卒業後、東京大学法学部の助手としてキャリアをスタートさせました。1960年には東京都立大学の専任講師となり、その後、1975年に同大学の法学部教授に就任、法学部長も務めました。1994年から1997年まで日本学術会議の会員を務め、1998年に東京都立大学を定年退職、名誉教授となりました。2000年には行政書士試験の試験委員長、2001年から2007年まで川崎市市民オンブズマンを務めるなど、教育界だけでなく、行政の分野でも重要な役割を果たしました。

著書

兼子氏は、多数の著書を執筆しており、その研究成果は広く社会に貢献しています。主な著書には、『行政行為の公定力の理論』（1960年）、『教育法』（1963年）、『現代フランス行政法』（1970年）、『国民の教育権』（1971年）、『地方自治法』（1984年）、『行政手続法』（1994年）、『行政法学』（1997年）、『新地方自治法』（1999年）などがあります。これらの著書は、行政法、教育法、地方自治法といった分野における重要な参考文献として、多くの研究者や実務家に読まれています。また、共編著も多数あり、『教育裁判判例集』、『教育法制』、『行政法判例集』、『教育行政と教育法の理論』など、教育法や行政法に関する研究を深める上で不可欠な文献を世に送り出しています。

翻訳

兼子氏は、翻訳家としても活躍し、フランスの行政法に関する重要な文献を日本語に翻訳しました。主な翻訳書には、『フランス市町村法典』（1979年）、J.リヴェロ著『フランス行政法』（1982年）、P.ウェール, D.プイヨー著『フランス行政法 判例行政法のモデル』（2007年）などがあります。これらの翻訳を通じて、日本の法学界にフランスの行政法の考え方を紹介し、比較法研究の発展に貢献しました。

兼子仁は、法学者として、教育者として、そして実務家として、多岐にわたる分野でその才能を発揮し、日本の法学、特に行政法と地方自治法の発展に大きく貢献した人物です。

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