内弁

内弁（ないべん）とは

内弁とは、朝廷における重要な儀式、例えば即位式、朝賀、節会、射礼などにおいて、会場となる場所（大極殿であれば会昌門、内裏であれば承明門）の内側に位置し、その区域内での諸事に対する責任を担う公卿のことです。

概要

儀式が執り行われる大内裏の中でも、中心的な会場である大極殿や内裏の内部を取り仕切る内弁は、儀式を円滑に進める上で非常に重要な役割を担っていました。そのため、通常はその時点で最も地位の高い公卿である「一上（いちのかみ）」がこの役職に就くのが慣例でした。

一上は、太政大臣および摂関を除く公卿の中で最も地位が高い者が任じられるのが一般的であったため、左大臣が一上に任じられ、儀式において内弁を務めることが多かったようです。ただし、一上が何らかの事情で参内できない場合には、参加している大臣（太政大臣・摂関は除く）の中で筆頭の地位にある者が内弁を務めました。大臣が不在の場合には、大納言がその任を担うこともありました。

内弁の制度が明確に整備されたのは、内裏式などが編纂された弘仁年間（810年 - 824年）以降と考えられています。

『西宮記』に記されている正月節会の作法によれば、内弁は予め内裏の宜陽殿にある兀子（ごっし：腰掛け）に着座して天皇の到着を待ちます。天皇が南殿に出御されると、内侍の召しに応じて殿上に昇り、参列した公卿や皇親を堂上の饗座に着かせます。その後、内弁が天皇に儀式の進行状況などを奏上し、天皇は宣命を下して参列者に禄（ほうび）を支給し、饗宴を進行させたとされています。

内弁は、儀式が滞りなく行われるように、細部にまで気を配り、責任を果たす重要な役職でした。

参考文献

柳雄太郎「内弁」（『国史大辞典 10』吉川弘文館、1989年）ISBN 978-4-642-00510-4
古瀬奈津子「内弁」（『日本史大事典 5』平凡社、1993年）ISBN 978-4-582-13105-5
* 関口力「内弁」（『平安時代史事典』角川書店、1994年）ISBN 978-4-04-031700-7

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