大極殿

大極殿とは

大極殿（だいごくでん）は、古代日本の朝廷において最も重要な建物であり、天皇の即位式や国家的な儀式が執り行われた正殿です。宮城（大内裏）の中心である朝堂院の北端中央に位置し、その内部には天皇の玉座である高御座が設置されていました。中国の道教では、天皇大帝の居所を「大極殿」と呼び、この名称は万物の根源を意味する「太極」に由来しています。そのため、中国では「太極殿」とも呼ばれます。この建物は、帝王が世界を支配する中心であることを象徴していました。

大極殿の起源

日本における最初の大極殿がどこに置かれたのかについては、飛鳥浄御原宮説と藤原宮説の二つの説があります。

飛鳥浄御原宮説

飛鳥浄御原宮に置かれたとする説は、福山敏男、小澤毅、渡辺晃宏らが提唱しています。彼らは、『日本書紀』に天武[[天皇]]が飛鳥浄御原宮で大極殿を召したという記述に着目し、この宮殿に大極殿が存在したと主張しています。特に、飛鳥京跡から発見された「エビノコ大殿」と呼ばれる大規模な正殿跡が、この大極殿の可能性が高いとされています。

藤原宮説

藤原宮に置かれたとする説は、狩野久、鬼頭清明らが提唱しています。彼らは、藤原宮が条坊制を採用した最初の本格的な都城であり、大極殿もこの宮で初めて整備されたと主張しています。

大極殿の原型

大極殿の原型は、飛鳥の小墾田宮の「大殿」にあったと考えられています。小墾田宮は、推古天皇の時代に造営された宮であり、南門、庁、朝庭、大門、そして大殿という構造を持っていました。この構造は、後の藤原宮や平城宮の基本構造の原型になったと考えられています。

また、難波長柄豊碕宮では、天皇の居所である内裏の前殿が、後の大極殿に相当する建物であったと考えられています。この宮では、内裏南門が非常に大きく、朝庭の規模も非常に広大であったことが特徴です。

大極殿の変遷

飛鳥浄御原宮の「エビノコ大殿」

飛鳥浄御原宮では、「エビノコ大殿」と呼ばれる建物が、大極殿として使用された可能性が高いとされています。この建物は、飛鳥京跡から発見された大規模な正殿跡であり、『日本書紀』の記述とも一致します。

藤原宮の大極殿

藤原宮は、条坊制を採用した最初の本格的な都城であり、その中心に大極殿が置かれました。この大極殿は、大極殿院の中央に位置し、太政官院との境界には大極殿閤門がありました。藤原宮は、計画的に設計された都城であり、大極殿はその中心としての役割を果たしていました。

平城京・恭仁京の大極殿

平城京には、第一次大極殿と第二次大極殿の二つが存在しました。第一次大極殿は、平城宮の正門である朱雀門の真北に位置し、大規模な朝儀が行われました。一方、第二次大極殿は、壬生門北に位置し、日常の朝政が行われました。この二つの大極殿は、それぞれ異なる役割を持っていました。

難波京の大極殿

難波京の難波宮（後期難波宮）は、平城京の副都として造営されました。この宮には、北から内裏、大極殿、朝堂、朝集殿が一直線に並ぶ構造でした。難波宮の構造は、後の長岡宮にも影響を与えました。

長岡京・平安京の大極殿

長岡京では、朝堂院と内裏の分離が始まりました。平安京の大極殿は、南の朝堂と直接つながる構造になり、朝堂院との一体化が進みました。大極殿は龍尾壇上に建てられ、朱欄で区切られていました。また、大極殿の背後には小安殿と呼ばれる休憩所がありました。平安時代には、大極殿は儀式の中心でしたが、次第に衰退していき、安元の大火で焼失した後は再建されることはありませんでした。

大極殿の復元

2010年、平城京遷都1300年を記念して、平城宮跡に第一次大極殿が実物大で復元されました。この復元では、中国古代建築の類例を参考に、大棟中央飾りが設置されました。

まとめ

大極殿は、古代日本の政治と文化の中心であり、天皇の権威を象徴する重要な建物でした。その構造や変遷は、日本の都城の歴史を物語る上で欠かせない要素です。各時代の大極殿の特色を理解することで、古代日本の政治や文化に対する理解を深めることができるでしょう。

この文章は、複数の資料をもとに、大極殿の歴史、構造、変遷についてまとめました。資料によって異なる見解もありますが、現時点で最も有力な説を中心に記述しています。この文章が、大極殿についての理解を深める一助となれば幸いです。

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