内藤弘矩

内藤弘矩：大内氏を支えた宿老の生涯

内藤弘矩（ないとう ひろのり）は、室町時代後期に周防・長門の守護大名であった大内氏に仕えた武将です。代々長門守護代を務めた内藤氏の当主として、大内政弘、義興の二代に仕え、その勢力拡大に大きく貢献しました。娘は後に大内義興の正室となり、大内義隆を生んでいます。

生涯

兄の謀反と家督相続

応仁の乱に際し、大内政弘に従って上洛し、各地の合戦で活躍しました。政弘が長期間にわたり京都に滞在していた文明2年（1470年）、叔父の大内教幸（道頓）が謀反を起こし、兄の内藤武盛もこれに加担します。しかし、この反乱は陶弘護らの活躍によって鎮圧され、弘矩は兄に代わって内藤家の家督を継承することとなりました。その後、文明4年（1472年）から23年間にわたり長門守護代を務めました。

陶弘護暗殺事件と権勢の確立

政弘の時代には、周防守護代の陶弘護とともに大内家の重臣として重きをなし、政弘が京都に滞在中の留守を守りました。文明14年（1482年）には、宴席で陶弘護が吉見信頼によって討たれるという事件（大内山口事件）が発生しますが、弘矩はその場で信頼を討ち果たし、事態を収拾しました。この功績により、大内家随一の重臣として、さらに権勢を振るうこととなります。

誅殺と謎

明応3年（1494年）に政弘が病により義興に家督を譲った後は、若年の君主を補佐しました。しかし、明応4年（1495年）2月13日に陶弘護の長男である陶武護が次男の陶興明を殺害した際、弘矩が同意していたとされています。そのわずか15日後の2月28日、弘矩は政弘の邸宅で、子の弥七弘和は義興が差し向けた兵によって討たれました。

皮肉なことに、弘矩の死後、義興は弘矩の娘を正室に迎え、さらに弘矩の後を継いだ弘春の嫡子である興盛に弘矩の娘と婚姻させています。義興に嫁いだ娘は、義興の嫡男である亀童丸（後の大内義隆）を産みました。

人物・逸話

誅殺の真相

藤井崇は、大内政弘が自らの権力を脅かす存在であった陶弘護を排除するために吉見信頼に暗殺させ、その口封じとして内藤弘矩を殺害するという計画であったとする説を提示しています。陶武護が弟の興明を殺害し陶氏の家督を奪ったわずか15日後に弘矩が殺害されたという事実は、この説を裏付ける根拠の一つとして挙げられています。

文化人としての一面

文人としても活動しており、当代屈指の連歌師であった宗祇とも交流した記録が残っています。

内藤弘矩は、大内氏の発展に大きく貢献した一方で、権力争いの犠牲となり、謎に包まれた最期を遂げた人物として、歴史に名を刻んでいます。

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