大内政弘

大内政弘：西日本に覇を唱えた守護大名

大内政弘（おおうち まさひろ）は、室町時代中期に活躍した守護大名であり、大内氏の第14代当主です。周防、長門、豊前、筑前を支配し、最盛期には安芸や石見の一部にも勢力を広げました。特に応仁の乱では西軍の主力として活躍し、その後の大内氏の発展の基礎を築きました。

生涯

出生と家督相続

文安3年（1446年）、大内教弘の子として生まれました。元服の際には、室町幕府8代将軍足利義政から偏諱を賜り、「政弘」と名乗ります。一説には、父・教弘が幕府に無断で安芸武田氏を攻めた際、幕府から勘気を受け、一時的に政弘が家督を継いだものの、後に教弘が赦免されたとする見解もあります。寛正6年（1465年）、父・教弘の死去に伴い20歳で家督を継承し、周防、長門、豊前、筑前の守護職も引き継ぎました。

細川氏との対立

父の代から続く日明貿易（勘合貿易）をめぐり、管領細川勝元と対立しました。伊予の河野通春を支援したことで、細川氏から大内氏追討の幕命を受けることになります。これにより、安芸では武田信賢や小早川煕平、毛利豊元らが大内軍と衝突しました。一方、政弘に庇護されていた斯波義敏は、政弘と勝元の対立から離脱し、幕府に赦免され斯波氏当主に復帰しました。この対立構造が、後の応仁の乱で政弘が反細川氏側に立つ要因の一つとなります。

応仁の乱

応仁元年（1467年）に勃発した応仁の乱では、山名宗全率いる西軍に加勢し、京都を舞台に約10年間も戦い続けました。東寺に陣を構えた際には、1万の兵力を有していたと伝えられています。西軍に擁立された足利義視から左京大夫に任じられる一方、東軍の足利義政からは朝敵とみなされ、討伐令が出されました。国内では、少弐氏や大内教幸による反乱が起こりましたが、重臣陶弘護らの活躍により鎮圧されました。文明5年（1473年）、山名宗全と細川勝元が相次いで死去した後も、政弘は足利義視を擁護し戦いを続けましたが、次第に幕府の懐柔策により、最終的に和睦へと進みます。文明9年（1477年）には、幕府から周防、長門、豊前、筑前の守護職を安堵され、京都から帰国しました。

乱後の西国支配

応仁の乱終結後、政弘は九州に出陣して少弐氏と戦い、豊前・筑前を確保しました。安芸や石見の豪族を臣従させ、瀬戸内海の海賊衆を平定するなど、西国の支配権確立に尽力しました。しかし、留守中に反乱を鎮圧した陶弘護との対立が深まり、文明14年（1482年）には、陶弘護が吉見信頼に暗殺される事件が起こりました（山口大内事件）。この事件を機に、政弘は家中の掌握に成功し、専制体制を確立しました。

再上洛と隠居

文明12年（1480年）には相伴衆となり、幕府との関係を修復しました。長享元年（1487年）には、足利義尚による六角高頼討伐に家臣を派遣し、自身も延徳3年（1491年）に再び上洛して六角氏討伐に従軍しました。しかし、明応3年（1494年）に中風が悪化したため、家督を嫡子・義興に譲り隠居し、明応4年（1495年）に50歳で死去しました。

内政と文化

政弘は、日明貿易や対朝貿易によって莫大な利益を上げ、軍事費や領国経営に充てました。応仁の乱後は、社会秩序の確立に尽力し、分国法「大内家壁書」を制定しました。

文化面では、和歌や連歌を好み、多くの文化人と交流しました。荒廃した京都から公家や僧侶、芸術家を招き、山口を文化の中心地として発展させました。特に、雪舟に作庭させたと言われる常栄寺庭園は有名です。また、能楽にも関心を示し、猿楽座を招いて興行を行わせました。古典の収集、出版にも力を入れ、大内版と呼ばれる出版物も制作しました。

政弘の時代は、大内氏が文化、経済の両面で最も繁栄した時期であり、「西の京」と呼ばれる山口の基礎を築いたと言えるでしょう。

偏諱を与えた人物

政弘は多くの家臣に偏諱を与えています。

大内政豊
大内弘豊
麻生弘家
麻生弘国
飯田弘秀
柿並弘慶
陶弘護
問田弘胤
問田弘貞
内藤弘矩
内藤弘和
内藤弘春
杉弘相
原田弘種
平賀弘保
右田弘詮
阿曽沼弘定
阿曽沼弘秀
吉川弘経
小早川弘平
高橋弘厚
松浦弘定
毛利弘元

これらの人物が、大内氏の勢力拡大と維持に貢献しました。

関連作品

テレビドラマ『花の乱』（1994年、NHK大河ドラマ、演：藤岡弘）

参考文献

石田晴男、小和田哲男、関幸彦、森公章『応仁・文明の乱』吉川弘文館、2008年。
内田伸 編『大内氏と山口市』山口市役所、1982年。
学研パブリッシング、光武敏郎文『毛利戦記 : 大内、尼子を屠った元就の権謀』学研パブリッシング、2010年。
近藤清石『大内氏實録』中元壮作、宮川臣吉、山口県山口町、1885年。
平野邦雄 著、瀬野精一郎 編『日本古代中世人名辞典』吉川弘文館、2006年。
広島県 編『広島県史』 中世（通史２）、広島県、1984年。
藤井崇「大内政弘の権力構造と周防・長門支配」『年報中世史研究』32号、2007年。
藤井崇「政弘期の分国支配」『室町期大名権力論』同成社、2013年。
防長新聞社山口支社 編『近世防長諸家系図綜覧』三坂圭治監修、防長新聞社、1966年。
復刻 御薗生翁甫 著「付録 新撰大内氏系図」、田村哲夫編修 編『近世防長諸家系図綜覧』三坂圭治監修（復刻版）、マツノ書店、1980年。
松岡久人 著、岸田裕之 編『大内氏の研究』清文堂出版、2011年。

関連項目

室町時代の人物一覧
文正の政変
船岡山城
* 大内山口事件

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