陶興明

陶興明（すえ おきあき）は、室町時代後期から戦国時代初期にかけての武将で、大内氏の家臣でした。通称は五郎。陶弘護の次男として生まれ、兄に武護、弟に興房がいました。

生涯

文明9年（1477年）に、陶弘護の次男として誕生。母は石見国の国人、益田兼堯の娘でした。6歳の時、文明14年（1482年）5月に父・弘護が山口の築山館にて石見国の国人、吉見信頼によって殺害されるという事件が起こります。その後、家督は兄である武護が継承しました。

家督相続

兄の武護は当主として活動し、延徳2年（1490年）10月には陶氏の本拠地である周防国都濃郡富田保の神社へ所領を寄進するなどしていました。しかし、その2年後の延徳4年（1492年）7月、武護は摂津国天王寺で出家し、世を離れてしまいます。これにより、興明が家督を相続することとなりました。

興明が新たな当主として活動していたことは、当時の史料からも確認できます。明応2年（1493年）には興明名義で石見国の益田氏との間で書状をやり取りしたほか、周防国都濃郡末武保の日面寺の寺領を安堵、同じく周防国都濃郡富田保別所にあった満願寺の住持職と寺領を安堵するなど、興明が発給した文書が残されています。これらの史料から、興明が家督を継承後、積極的に領内の安定に努めていた様子がうかがえます。

最期

明応4年（1495年）2月13日、興明は周防国富田の居館において、兄である武護（出家後は宗景と名乗っていました）によって討ち取られました。興明の母（弘護の正室）の益田氏が開基となった龍豊寺（山口県周南市大道理）の過去帳には、「春圃孝英大禅定門　明応四年二月十三日　生年十九歳」と記されています。「春圃孝英」は興明の法名と推定されており、このことから、興明の享年は19歳であったと考えられています。

興明を討った武護については、政弘の承認を得た大内義興が明応4年2月23日付で安芸国の阿曽沼氏に対し、安芸国能美島（現在の広島県江田島市）周辺での武護の捜索を命じています。武護はその後、高野山へ赴き、最終的には姫山（現在の山口市）で討ち死にしたと伝えられています。

興明の死後、家督は弘護の三男（興明の弟）である興房が継承しました。若くして非業の死を遂げた興明でしたが、その短い期間においても、陶氏の当主として一定の役割を果たしていたことが史料から窺えます。

参考文献

播磨定男　『山口県の歴史と文化』　大学教育出版　2002年　ISBN 4-88730-475-7
藤井崇　『大内義興　西国の「覇者」の誕生』　戎光祥出版　2014年　ISBN 978-4-86403-111-0

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