内藤政恒 (考古学者)

内藤政恒：考古学への情熱を燃やした旧藩主の息子

内藤政恒（1907年7月17日 - 1970年10月21日）は、昭和期の考古学者として知られています。彼は旧日向延岡藩主内藤政挙の六男として生まれ、旧三河挙母藩内藤家の14代当主となりました。その学術的な業績は多岐にわたり、日本歴史考古学会会長、侍従兼常陸宮傳育官、皇后宮事務官、式部官、玉川大学文学部教授、東京薬科大学教授といった要職を歴任しました。

生い立ちと学問への目覚め

1907年、内藤政恒は宮崎県で生を受けました。小学校3年生の頃、内藤家の使用人の実家で考古資料に触れたことが、彼の考古学への関心を пробудилます。学習院中等科時代には陸上部に所属する一方で、内藤家伝来の武具や古文書に触れ、歴史への興味を深めました。その後、内藤政光の養子となり、東北帝国大学に進学。当初は美学を志望しましたが、喜田貞吉の考古学の講義に触発され、日本古代史の研究に没頭するようになりました。

研究者としての出発

大学在学中、内藤政恒は神経衰弱に悩まされる時期もありましたが、大和路の古寺巡りを通じて古瓦の採集を行い、研究テーマを見出します。帝室博物館の石田茂作との出会いは、彼にとって大きな転機となりました。石田を終生の師と仰ぎ、考古学研究に邁進。東北地方の古代遺跡調査に積極的に参加し、卒業論文では平安時代以前の寺院の位置について論じました。

宮内省での勤務と研究活動の再開

大学卒業後、内藤政恒は宮内省に入省し、侍従などの要職を歴任しました。敗戦後、宮内省を退官した後は、再び考古学の研究活動を再開。玉川大学助教授、教授として教鞭を執る傍ら、日本考古学協会や歴史考古学研究会の活動にも積極的に参加しました。四天王寺の再建に伴う発掘調査にも調査員として参画し、日本の考古学研究に大きく貢献しました。

古瓦研究の第一人者として

内藤政恒は特に古瓦の研究に力を注ぎました。古瓦愛好家の会合「温瓦会」を立ち上げ、歴史考古学研究会（後の日本歴史考古学会）の会長として、古瓦研究の発展に尽力しました。彼の長年の研究成果は、没後に『東北古瓦図録』として出版され、奈良国立博物館に収められています。これは、東北地方の古瓦研究における貴重な資料となっています。

人となりと晩年

内藤政恒は、温厚で誠実な人柄で多くの人に慕われました。しかし、晩年は口腔内の悪性腫瘍に苦しみ、1970年に東京医科歯科大学医学部附属病院で亡くなりました。彼の死後も、その研究成果は多くの研究者に引き継がれ、日本の考古学研究に大きな影響を与え続けています。

主要な業績

『本邦古硯考』
『内藤政恒集』
『古瓦』（住田正一との共著）
『信濃国分寺跡』（共編）

内藤政恒は、日本の考古学、特に古瓦研究において多大な貢献をした人物として、その名は永く記憶されることでしょう。

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