内藤政挙

内藤政挙：延岡藩最後の藩主から近代宮崎の礎を築いた実業家へ

内藤政挙は、日向国延岡藩の第8代にして最後の藩主であり、延岡藩内藤家宗家13代当主として、激動の幕末から明治、大正期にかけて重要な役割を果たしました。生涯を通じて、政治家、実業家、教育者として多大な貢献を残した彼の波乱に満ちた人生を紐解いていきましょう。

幕末の動乱と新政府への対応

1852年、遠江掛川藩主・太田資始の六男として江戸に生まれた政挙は、1860年、延岡藩主・内藤政義の養子となりました。1862年、家督を継承した彼は、譜代大名である実家と養家の立場から、佐幕派として活動します。第一次長州征伐(1864年)と第二次長州征伐(1866年)には幕府軍に加わって参戦しました。

鳥羽・伏見の戦い(1868年1月)では在国していましたが、大坂に駐在していた延岡藩兵が旧幕府軍の命令を受けていたことから、新政府から朝敵として扱われます。しかし、京都にいた重臣小林祐蔵の迅速な弁明と薩摩藩、熊本藩への働きかけ、そして政挙自身の薩摩藩への誓約書の提出などにより、事態は沈静化しました。その後、上京して糾問を受けた政挙は、部下の責任を負う形で謹慎処分を受けましたが、事実上の赦免となりました。戊辰戦争では後方警備を命じられ、戦闘には参加しませんでした。

藩知事から実業家へ

1869年の版籍奉還で延岡藩知事となった政挙は、1871年の廃藩置県により免官。その後、東京に移り慶應義塾で学んだものの、眼病のため退塾を余儀なくされました。それでも、多くの旧藩士を慶應義塾へ送り込みました。宮中勤番、宮中祗候を歴任し、1884年の華族令で子爵に叙せられました。

1890年、西南戦争と延岡大火で疲弊した延岡に戻った政挙は、故郷の復興と教育振興に尽力します。家政改革を行い、日平銅山の経営に乗り出し、近代的な精錬技術と水力発電所の導入により、莫大な富を築きました。山林や農地を買い入れ大地主となり、銅山閉山後も宮崎県有数の資産家として、その経済力を維持しました。

教育と社会貢献

政挙は、資産の一部を慈善事業と教育に投じました。藩校を起源とする亮天社を中学校として整備し、宮崎県立延岡中学校へと発展させました。さらに、女子教育に力を入れ、延岡高等女学校を設立。県庁所在地以外での女子中等教育の先駆けとなりました。高等女学校は昭和期まで内藤家によって運営されました。また、銅山従業員の子弟のために日平尋常小学校を、地域住民のために見立尋常小学校を設立するなど、教育への貢献は多岐に渡ります。

地域経済への貢献と晩年

1910年、延岡電気所を設立した政挙は、電力事業と築港事業を通じて、日本窒素（現在の旭化成の前身）の工場誘致を実現させました。このことが、今日の延岡市の経済的基礎を築いたとされています。彼の地域経済活性化への功績をたたえる銅像が、延岡城に建立されています。1927年、76歳で生涯を閉じました。

内藤政挙は、藩主としての責務を果たすとともに、近代日本の発展に貢献した稀有な人物でした。幕末の動乱を乗り越え、郷土の復興、教育の振興、そして地域経済の活性化に生涯を捧げた彼の功績は、今もなお、延岡の人々の記憶に深く刻まれています。彼の行動と決断は、現代社会においても学ぶべき点が多く残されています。

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