太田資始

太田資始の生涯と業績

太田資始（おおた すけもと）は、江戸時代後期の大名であり、遠江国の掛川藩の5代藩主として知られています。彼は文化7年（1810年）に太田資言の末期養子として藩主を継ぎ、重職を歴任しました。彼の官位は従四位下、侍従、備後守、備中守で、掛川藩太田家の9代目に当たります。

出身と早期の経歴

近江国宮川藩主・堀田正穀の三男として生まれた資始は、初名を正寛と称しました。彼は1810年、太田資言の養子となり掛川藩の藩主に就任。その後、1812年には将軍・徳川家斉に謁見を果たし、文化10年（1814年）には従五位下・備中守に叙任されます。1818年に奏者番に任命され、次第に幕府の中枢での影響力を強めます。

水野忠邦との確執

資始の政治家としての歴史は、11代将軍・徳川家斉の下で老中としての職に就く際の水野忠邦との関係によって彩られています。資始は忠邦の老中首座としての立場や改革に対し度々異議を唱え、上知令や倹約令についても反対の立場を取ったのです。また、忠邦を追放しようと策謀する中で、当時の情勢を読み間違え、ついには1841年に老中を罷免され、隠居することとなります。この一連の出来事は、幕末の政治におけるしがらみや権力闘争の一端を示しています。

老中再任と再びの罷免

安政5年（1858年）、資始は老中に再任されますが、これもまた異例のケースでした。隠居の立場から老中となるのは珍しく、大老・井伊直弼とともに政局に絡むことになります。しかしこの再任後も、尊王倒幕志士に対する取り締まりを巡って直弼とは対立し、安政6年（1859年）には再度老中を罷免されました。

三度の就任と短い在職

資始は文久3年（1863年）に三度目の老中に就任しますが、その任期はわずか1か月で終了します。幕府は有能な資始を再び老中として迎えようとしましたが、彼が亡くなるまで合意には至りませんでした。

人物像と逸話

資始の人物像は、周囲から「直言抗弁の士を好む」と評されるなど、誠実かつ厳格なリーダーシップが感じられます。特に、彼が愛馬の死を嘆いた際には、他の家臣が心配して慰めようとするも、彼はそれを恥と思い、以後はこのことを口にしなかったとの逸話があります。彼は「物の軽重を誤ることは、人君としてなすべきことではない」と戒め、自らの立場を常に理解していたのです。また、大坂城代時代に交わった大塩平八郎とも強い関係があり、その後の動乱においても資始は評価される存在であり続けました。

最後の日々

資始の生涯は、慶応3年（1867年）に68歳で幕を閉じます。彼はその豊富な経験と知識で幕末という tumultuousな時代に数回にわたり政権に関わり、歴史に名を刻みました。彼の政治手腕や人間性についての評判は、後世にも影響を及ぼし、現在も多くの作品に登場しています。特に松本清張の小説『天保図録』や、テレビドラマ『花の生涯』などで彼の存在は描かれ、江戸時代の重要な人物の一人として位置づけられています。

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