内藤義英

内藤義英：俳句に生きた磐城平藩の世嗣

内藤義英（ないとう よしひで）は、江戸時代前期から中期にかけて生きた俳人であり、陸奥国磐城平藩の世嗣という、二つの顔を持っていました。露沾（ろせん）という俳号で知られ、俳句の世界でその名を残しました。

生涯

明暦元年（1655年）、磐城平藩3代藩主・内藤義概の次男として誕生。本来であれば世子となるはずでしたが、父の寵臣の讒言と、弟への溺愛により廃嫡され、幽閉されるという不遇の時代を過ごしました。貞享2年（1685年）に父が死去すると、弟の義孝が家督を継ぎました。

藩政への関与を絶たれた義英は、江戸麻布の屋敷で隠居生活を送ります。父・義概も俳諧を嗜む大名であり、その影響を受けた義英は、露沾という俳号を名乗り、松尾芭蕉や宝井其角といった当時の著名な俳人たちと交流を深めました。元禄4年（1691年）に刊行された芭蕉七部集の一つ「猿蓑」では、春の巻の冒頭に義英の句が採用されるなど、俳人としての才能を開花させました。

享保3年（1718年）、5代藩主・内藤義稠が死去すると、義英の長男である豊松（後の内藤政樹）が6代藩主となります。幼少の政樹の後見人として、義英は再び藩政に関与し、父の代から続いていた政治的混乱（小姓騒動）の鎮静化に尽力しました。政樹が成長すると実権を譲り、再び俳句活動に専念する日々を送ります。

義英の影響は家中にも及び、福田露言や水間沾徳など、俳人として知られる家臣を輩出しました。著作として句集『露沾公句集』があります。享保18年（1733年）に79歳で死去しました。

系譜

父：内藤義概（1619-1685）
母：松平忠国娘
室：不詳
長男：内藤政樹（1703-1766） - 内藤義稠の養子
女子：菊姫 - 松平頼永正室
女子：松平信岑継室

内藤義英は、不遇な境遇に置かれながらも、俳句を通して自己を表現し、文化的な貢献を果たした人物として、その名が残されています。

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