内陸流域

内陸流域（ないりくりゅういき）

内陸流域とは、地球表面において、降雨や流入する河川などの水が、最終的に海や大洋といった外部の水系へ流出せず、その流域内で蒸発したり、地下へ浸透したりすることで失われる水系の集水域を指します。これは、陸地に囲まれた閉鎖的な地形構造（分水界）を持つために発生します。

形成とその特徴

地球上の水循環において、陸地に降った水は通常、河川などを経て標高の低い場所へと流れ、水系を形成しながら最終的には海へと注ぎます。この水が集まる範囲を流域と呼び、水系を取り囲む分水嶺によって境界が定められます。多くの流域では、このように水が海へ流れ込むことで水循環の一環が完結します。

しかし、大陸の広大な内陸部においては、地形的な要因や気候条件によって、水が海へ到達する前に失われる場合があります。これは、河川の水が土壌に吸収され地下水となったり、特に乾燥した気候下では蒸発量が降水量を上回るために発生します。また、海への流出口を持たない湖、すなわち無口湖（内陸湖とも呼ばれる）に河川が流れ込む場合も、水は外部へ流出せず流域内に留まります。このような内陸湖は、かつて海だった場所や、周囲の河川が集まる盆地や低湿地に形成されることが一般的です。

内陸流域に存在する湖は、海と同様に塩分濃度が高い塩湖（鹹湖）であることが多いです。これは、流域内で運ばれた塩分が蒸発によって濃縮されて蓄積されるためです。特に降水量の少ない乾燥地帯では、強い日差しと乾燥により蒸発がさらに促進され、湖水の塩分濃度が極めて高くなります。これにより、湖の周囲に塩類平原が広がったり、場合によっては岩塩鉱床が形成されることもあります。

人間活動との関わり

内陸流域の多くは、降水量が少なく乾燥している上に、塩分濃度が高いといった環境のため、農業用水の確保が難しく、農耕に適さないことが多いです。また、気温の日較差や年較差が非常に大きいといった厳しい気候条件も相まって、人間が定住し生活するには不向きな場所が多く、居住者はごく少数に限られます。

一方で、歴史的には塩湖から塩を採取する「採鹹」が行われた事例も見られます。さらに、人間の活動が限定的であったために、手つかずの地下資源が残されている可能性も指摘されています。

しかしながら、居住者が少ないことを逆手に取り、環境への配慮が不十分なまま資源開発が行われ、土壌や地下水が汚染された事例も報告されています。また、アメリカ合衆国のネバダ州、カザフスタン、中国のロプノール、イギリスによるオーストラリア南部、フランスによるアルジェリア南部のように、核実験場として利用された悲しい歴史を持つ場所も存在します。

分布

内陸流域は地球上の各大陸に存在しています。特にオセアニア大陸では全域の64パーセント以上、北アメリカ大陸でも10パーセントを占めるとされています。南極大陸を除く地球全体の陸地面積のうち、約18パーセントが内陸流域に該当すると言われています。

主な内陸流域の例

世界には多くの内陸流域が存在しますが、代表的なものとして以下のような場所が挙げられます。

タリム盆地（中華人民共和国）
ツァイダム盆地（中華人民共和国）
バッドウォーター（アメリカ合衆国、デスヴァレー）
グレートアーテジアン盆地（オーストラリア）

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