円蔵院 (山梨県南部町)

円蔵院

円蔵院は、山梨県南巨摩郡南部町にある臨済宗妙心寺派の寺院です。山号を南部山と称し、本尊には観音菩薩を祀っています。この寺院は、県南部の旧南部町域の中央部に位置しており、富士川の右岸、支流である船山川との合流地点近くに立地しています。西側には、身延道が南北に走っています。

歴史

『甲斐国志』によれば、円蔵院は戦国時代の天文年間（1532年～1555年）に、河内領を治めていた穴山信友が自身の菩提寺とするために創建したとされています。穴山氏の本拠地であった下山館（現在の南巨摩郡身延町下山）の南方に位置しています。

開山には、甲府の長禅寺の住職であった岐秀元伯の弟子、桂岩徳芳が招かれました。穴山氏によって諸堂が整備され、寺領も寄進されました。桂岩は、信友と信君から深く帰依され、信君の子である勝千代の画像（最恩寺所蔵）には賛文を寄せています。穴山氏が断絶した後も、徳川氏によって庇護され、江戸時代には歴代の将軍から朱印状が与えられ、寺領が安堵されました。なお、円蔵院は京都の妙心寺を本寺としています。

また、武田氏時代から徳川氏時代にかけての河内領の支配文書を含む「円蔵院文書」が所蔵されており、地域の歴史を伝える貴重な資料となっています。

文化財

円蔵院には、山梨県指定の文化財が2件所蔵されています。

絹本著色穴山信友像

この肖像画は、昭和42年8月7日に山梨県指定文化財に指定されました。永禄3年（1560年）に亡くなった穴山信友を描いたもので、縦93.6センチメートル、横37.3センチメートルの大きさです。制作されたのは戦国時代の永禄10年（1567年）です。

剃髪した法体姿で、やや大ぶりの顔立ちで、座って左を向き、右手には扇を持っています。麻葉文様の黒法衣をまとい、内衣は白無地の半襟と青衣です。画面上部には、美濃国の大圓寺の住職である希菴玄密による賛文が寄せられています。この賛文は永禄10年（1576年）のもので、永禄9年の信友の七回忌と信友夫人の死去に際して、信君によって発注されたとされています。南松院（身延町下山）所蔵の穴山信友夫人画像や桃隠和尚像との類似も指摘されており、同じ工房で制作された可能性が考えられています。

絹本著色涅槃図

この涅槃図は、昭和58年3月10日に山梨県指定文化財に指定されました。戦国時代の仏涅槃図で、縦105.5cm、横97.5cmの大きさです。画面右の銘文によれば、弘治2年（1556年）に穴山信君によって寄進されたとされています。県内では、向嶽寺と大蔵経寺に室町時代の仏涅槃図が伝わっており、この涅槃図はそれらに次ぐ作例と位置づけられています。

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