円観

円観の生涯とその影響

円観（えんかん、生年：弘安4年閏7月14日、没年：正平11年/延文元年3月1日）は、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけての重要な天台宗の僧侶です。彼は「五国大師」として知られ、後伏見天皇、花園天皇、後醍醐天皇、光厳天皇、光明天皇の五人の天皇に戒を授けたことからこの異名がつきました。

生い立ちと修行期

現在の滋賀県長浜市湖北町今西に位置する近江国浅井郡今西荘で生まれた円観は、1295年に比叡山延暦寺に入寺し、そこで大乗戒の一つである円頓戒の教えを受けました。彼は官僧としても活動しており、「伊予房道政」という名でも知られていますが、官僧の生活に満足できず、1303年頃には比叡山を降り、禅僧としての道を選びました。

1310年、円観は黒谷に戻り、師である興円に従って再び隠遁生活に入り、北白川で律院を建立しました。この地で円頓戒を広める活動に尽力しました。

後醍醐天皇との関係

後醍醐天皇の帰依を受けた円観は、1326年に法勝寺の勧進職に就任し、同寺の再建に寄与します。その活躍により、円観は法勝寺の住持に任命されました。また、彼は文観や忠円らと共に後醍醐天皇の倒幕計画にも参加し、大寺の僧兵をまとめて北条氏を退けるための祈祷を行いました。

しかし、1331年に計画が幕府に発覚し、円観は逮捕され、陸奥国への流罪となりました（元弘の乱）。

建武元年（1334年）に始まった建武の新政では、円観の罪は赦され、法勝寺に戻ることが許されました。そして、東大寺の大勧進職にも就任しましたが、朝廷が二分された際には北朝に加わり、様々な活動を展開しました。

著作と遺産

円観は円頓戒に関する多くの著作を残しています。また、彼の活動のおかげで、鎌倉の宝戒寺、加賀の薬師寺、伊予の等妙寺、筑紫の鎮弘寺など、全国に四つの戒壇が設立されることとなりました。円観の教えは、彼の弟子たちによって後生に継承され、彼の流派（恵鎮門流）は戦国時代まで延暦寺とは独立した集団を形成したと考えられています。

太平記との関わり

また円観は、原『太平記』の編纂に関与した大きな人物でもあります。今川貞世による『難太平記』には、法勝寺にいた円観が、足利直義に『太平記』の三十余巻を見せたとの記録も残されています。

円観の生涯は、僧侶としてだけでなく、政治や文化の面でも多彩な影響を及ぼした事例として、またその教えが現代にまで受け継がれることを示す重要なケースとして、歴史に刻まれています。

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