凌漢

凌漢（りょう かん）は、生没年不詳の明代の官僚であり、字を斗南と称しました。彼は開封府原武県を本貫とします。

生涯

凌漢は、1384年（洪武17年）に秀才としてその才能を認められ、「烏鵲論」という論文を献上しました。この論文が彼の官僚としてのキャリアの始まりとなり、その後、御史として様々な役職を歴任しました。陝西を巡按した際には、民衆の困窮を訴える上奏を行い、その直言が洪武帝の賞賛を受けることとなりました。また、刑事事件における公平な裁きは、彼の名声を高めました。

南京に召還された際、洪武帝は彼に酒と金を与えようとしましたが、凌漢は「酒はいただきますが、金は受け取るべきではありません」と述べ、その清廉な姿勢が洪武帝を大いに喜ばせたと言われています。1388年（洪武21年）1月には、浙江道監察御史から右副都御史に抜擢され、その昇進は目覚ましいものでした。しかし、当時左副都御史であった詹徽とは意見が合わず、彼は常に面と向かって詹徽の誤りを指摘しました。これが詹徽の恨みを買う原因となりました。

同年8月、監察御史の桂満の弾劾を受け、凌漢は刑部侍郎に左遷されることになります。さらにその後、礼部侍郎へと転じましたが、1390年（洪武23年）に詹徽の弾劾により免官となってしまいます。洪武帝は凌漢を郷里に帰そうとしましたが、凌漢は詹徽の存在を心配し、あえて南京に留まることを請願しました。このことから、彼がいかに現状を冷静に分析し、自身の身の安全を考慮していたかがうかがえます。

1392年（洪武25年）には、左春坊左賛善として再び官界に復帰し、1393年（洪武26年）に詹徽が処刑されると、凌漢は右僉都御史に抜擢されました。この復帰劇は、彼の実直な人柄と能力が周囲に認められた結果と言えるでしょう。その後、凌漢は官を辞して故郷へと帰りました。彼の生涯は、才能と公正さ、そして政治的な駆け引きが交錯する明代初期の官僚社会を象徴するかのようです。

凌漢の事績は、『明史』巻138 列伝第26に詳しく記録されており、彼の生涯をより深く知ることができます。

脚注

『明史』巻138 列伝第26

参考文献

『明史』巻138 列伝第26

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