凍える牙

凍える牙

『凍える牙』は、乃南アサによる日本のミステリー小説で、新潮社の『新潮ミステリー倶楽部』から刊行されました。この作品は、1996年の直木三十五賞を受賞し、多くの読者や批評家から高い評価を受けています。

作品概要

本作は、様々な角度から物語を受け取れる点が特徴です。直木賞の候補に挙がった際、他の候補作に比べて批評が分かれる中、男女2人の刑事の関係性が特に評価されました。阿刀田高や渡辺淳一をはじめとする選考委員からは、推理小説としての欠陥が指摘された一方で、黒岩重吾や田辺聖子などにはその人間描写が賞賛され、受賞に結びつきました。2001年には天海祐希主演のドラマとして、2010年には木村佳乃が主役となるリメイク版が放送され、また2012年には韓国で映画化されるなど、幅広いメディア展開がなされています。

あらすじ

物語は、深夜のファミリーレストランでの不気味な事件から始まります。客として訪れた男性が突然発火し、そのまま命を落としてしまいます。しかも、彼の左足首には犬に噛まれたような痕跡が残っていました。目撃者の証言により、自殺の可能性は排除され、捜査が開始されます。

捜査の中心となるのは、音道貴子という若き女性刑事と、彼女のパートナーである中年の滝沢保です。二人のコンビは、一見すると意見が食い違いがちですが、互いに補い合いながら捜査を進めていきます。事件は連鎖的に犬に関わる新たな死を引き起こし、捜査は難航。しかし、そこで浮かび上がるのが「疾風」と名付けられたウルフドッグの存在です。この犬は一体どのように事件と関わっているのでしょうか。

登場人物

音道 貴子

警視庁刑事部第3機動捜査隊の若い刑事。彼女は過去に交通警察官として働いていた経験を持ち、無事な捜査を目指しつつも、捜査の過程でさまざまな困難に直面します。恋愛の過去や愛車へのこだわりが彼女の個性を際立たせています。

滝沢 保

中年のベテラン刑事で、彼の経験は捜査における貴重な資源となります。見た目はずんぐりした体型ですが、その内面には深い思慮が隠されています。彼の過去の家庭事情が、物語の進行につれて明かされることで、よりドラマチックな要素が加わります。

メディア展開

『凍える牙』は、その人気と評価の高さから映像作品に恵まれました。2001年にNHKで初ドラマ化され、天海祐希が貴子役を演じたNHK版以外にも、2010年にはテレビ朝日による新たなドラマも制作されています。さらに、同年に韓国で映画化された際には、ソン・ガンホとイ・ナヨンが主演を務めました。これにより、作品の幅広い魅力が国内外で認知されることとなります。

総じて『凍える牙』は、深い人間ドラマとスリリングなミステリーが交錯する力作であり、多くの人々に愛され続けています。

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