函館夜景

函館夜景：光と歴史が織りなす絶景

函館夜景は、北海道函館市が誇る、その地形と歴史が深く関わった独特の夜景です。市街地の両側を海（函館湾と津軽海峡）が囲み、その中央に市街の灯りが輝く姿は、まるで宝石を散りばめたようです。函館山からの眺めは特に有名で、その美しさから「100万ドルの夜景」とも称されます。

バランスの取れた地形と眺望

函館夜景の特徴は、何と言ってもそのバランスの取れた地形です。両側を海に挟まれた市街地が、夜になると無数の灯りで彩られます。そして、その夜景を一望できる函館山山頂は、程よい高さの眺望地点として最適です。また、函館の街には低層建築物が多いため、街路灯の明かりが夜景の大きな構成要素となっています。

夜景を楽しむための眺望地点は、函館山山頂からの「表夜景」と、横津岳山麓からの「裏夜景」の2つが代表的です。市街地や他の観光施設からのアクセスも良く、交通機関も充実しているため、気軽に訪れることができます。

軍事拠点から観光名所へ

実は、函館はかつて陸軍の重要拠点でした。第二次世界大戦終結前は、要塞地帯法によって函館山への登山や写真撮影が厳しく制限されていました。これは、函館要塞がロシア帝国を仮想敵国として構築された軍事施設であったためです。しかし、戦後、函館市と商工団体は函館山の払い下げを陳情。1946年に一時使用が許可され、観光開発が始まりました。1950年には登山道が開通、1953年には函館市営バスによる登山バスが運行を開始。1958年には函館山ロープウェイも営業を開始し、多くの観光客が訪れるようになりました。

函館山の観光開発を提案したのは宗藤大陸という人物です。1957年には、週刊読売の「新日本百景」で函館山が第1位に選ばれたことで、その人気はさらに高まりました。

夜景を支える電力事業

函館夜景の灯りを支える電力事業も、この街の歴史の一部です。1896年には函館電燈所が火力発電を開始し、その後、渡島水電が1907年に買収して、函館とその近郊に電力を供給しました。1908年には水力発電所である大沼発電所が完成し、送電を開始しました。

平成から令和へ、夜景の進化

平成に入り、1991年には函館青年会議所関係者が発起し、「函館夜景の日」が制定されました。この日は、8（や）とトランプの“K”にあたる13の語呂合わせから8月13日に定められました。また、函館市は国の交付金を活用し、歴史的建造物のライトアップや街路灯の強化を行うことで、夜景の美しさをさらに引き上げました。

「100万ドルの夜景」商標権問題

函館夜景をPRする際に使用されてきた「100万ドルの夜景」という言葉は、1998年に福島県の宿泊事業者に商標登録され、函館市との間で問題となりました。しかし、その後、宿泊事業を引き継いだ実業家と函館の飲食店ラッキーピエロの経営者が知人であったことから、ラッキーピエロが商標権を購入し、問題は解決しました。

近年の課題：オーバーツーリズム

近年、函館夜景は新たな課題に直面しています。2019年以降の新型コロナウイルス感染症収束に伴い、訪日外国人旅行客が増加したことで、2024年からは登山客が集中するオーバーツーリズムが発生しています。特に一定時間帯に登山客が集中する傾向にあり、観光客と地元住民の両方が快適に過ごせるような対策が求められています。

年表

1946年：大蔵省より函館山の一時使用許可
1950年：函館山登山道開通
1953年：函館市営バスが函館山登山バス運行開始
1957年：函館山が「新日本百景」第1位に選ばれる
1988年：函館山ロープウェイ、施設大型化
1991年：函館夜景の日制定
1998年：「100万ドルの夜景」商標権問題発生、後に解消
2003年：函館市営バスが函館バスへ完全移管

気象条件

5月から7月にかけては、函館山山頂部で霧が発生することがあり、夜景が全く見えない日もあるので注意が必要です。

裏夜景

2004年、函館市は横津岳山麓から函館山方面を望む「裏夜景」の調査を行いました。「桔梗農道」と「函館KGカントリークラブ」が候補地として挙げられましたが、前者は農地であるため施設の整備が難しく、後者は民間施設であるためアクセス道路の整備に課題が残っています。

函館夜景は、その美しい光景だけでなく、歴史や人々の努力によって作られた観光資源です。訪れる際には、その背景にも思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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