函館市交通部500形電車

函館市交通部500形電車

函館市交通部500形電車は、1948年（昭和23年）に登場した函館市交通部（現：函館市企業局交通部、通称：函館市電）の路面電車車両です。

概要

戦後の輸送力増強のため、1948年から1950年（昭和25年）にかけて30両（501 - 530号）が日本車輛製造で製造されました。これは、1936年（昭和11年）導入の300形以来、戦後初の新造車でした。

設計は、戦前に運行されていた大型ボギー車50形や、1934年（昭和9年）の函館大火からの復興時に導入された半鋼製車300形を手掛けた、当時の函館市交通局の白旗譲技師によるものです。

本形式は函館市電で最大両数を誇りましたが、1980年代後半以降、老朽化、路線の縮小、2000形・3000形・9600形といった新型車両の導入により、淘汰が進みました。2020年現在、501号（2代目）と530号の2両が在籍しています。530号は函館市電の一般営業車両としては最古参ですが、函館市企業局は当面維持する方針です。

製造

30両全車が日本車輌東京支店蕨工場で製造されました。

501 - 515：1948年11月製造、1949年（昭和24年）9月28日認可
516 - 520：1949年12月製造、1950年（昭和25年）9月30日認可
521 - 525：1950年5月製造、1951年（昭和26年）3月6日認可
526 - 530：1950年11月製造、1951年3月6日認可

日本車輌には、1948年10月に日本車輌東京支店蕨工場で撮影された501号と、1950年11月に函館市交通局駒場車庫において撮影された530号の落成写真が残されています。

改造

集電装置の交換

入線時、集電装置はビューゲルでしたが、1962年（昭和37年）から翌年1月にかけて全車Z型パンタグラフに交換されました。

中扉の閉鎖

当初は乗務員3名で運行されていましたが、人件費節約のため1963年（昭和38年）11月より中扉を締め切り、前後2扉のみの使用となりました。10両（501 - 510号）の中扉部分には座席が設けられ、定員も90名に増加しました。

ワンマン化改造

706形、710形、800形に続いて、1970年から翌年にかけてワンマン化改造が実施されました。正面窓の拡大、乗降扉の自動化、後扉の閉鎖が行われ、閉鎖が解かれた中扉は2枚引戸から1枚引戸に改造されました。後扉は埋め込まれましたが、痕跡は確認できます。

暖房取付

1971年から翌年にかけて、当時在籍していた27両に灯油燃焼式の暖房装置が取り付けられました。この装置は1969年に706形706号に試験的に取り付けられ好評だったため、本形式にも採用されました。

503 - 516：1971年10月
517, 519 - 530：1972年（昭和47年）11月

車体更新

505号は1987年（昭和62年）1月、国鉄五稜郭工場で前年に更新された710形711号に準じた車体に更新され、501（2代）に改番されました。

カラオケ電車への改造

509号は1987年3月に自局工場で貸切専用のカラオケ電車に改造されました。車内にはカラオケ装置、テーブル、冷蔵庫、流し台などが設けられ、塗装もマルーン基調に変更されましたが、1996年（平成8年）7月に廃車となりました。

509号廃車前の1995年7月には、501（2代目）の車内にシンセサイザーカラオケ装置やテーブルが設置され、2代目のカラオケ電車として運行を開始しました。その後、「AMUSEMENT TRAM」と改名しリニューアルを経て運行されましたが、2020年からの新型コロナウイルス感染拡大の影響で利用が減少し、2021年12月から2022年5月にかけて多目的に使用できるよう改修されました。カラオケ装置は撤去され、テーブルは着脱式に変更、吊革も増設されました。塗装も営業用当時のライトグリーンとアイボリーの新標準色に変更されています。

車体塗装

登場時の塗装は、上半分がマンチュアサンドライト（ダークベージュ）、下半分がマジョルカブルー（濃紺）のツートンで、300形に倣ったものでした。1975年（昭和50年）頃には510号が当時の標準色であったクリームと薄緑のツートンに塗り替えられたほか、この頃から導入されたCMカー（全面広告車）にも起用されました。

1988年からは一部の車両がアイボリー基調にライトグリーンの帯が入った塗装（新標準色）に塗り替えられました。

530号は2008年（平成20年）頃に新標準色から登場時の塗装に戻され、窓枠もニス塗りとなっています。

運用

501号

「アミューズメントトラム」として、夏季の「カラオケビール電車」などに使用されています。個人やグループでの貸切運行も可能です。

530号

函館競馬、はこだて港まつり開催日などの多客期の増車が中心ですが、路面凍結が発生するような厳冬期には、線路上や線路と舗装の隙間に入り込んだ雪を取り除く軌道上の安全確認業務も担っています。501号と同様に貸し切りも可能で、JR東日本のクルーズトレイン『TRAIN SUITE 四季島』の利用者向けに貸し切られることもあります。

特別運行

2013年6月29日には、函館の路面電車開通100周年を記念して、排4号、39号、9602号、723号とともに『100年間の電車大行進』と題し、5両が一列になって全線を行進するイベントが行われました。翌日の始発前にも同様の方法で『モーニング電車大行進』が行われ、530号と723号は臨100系統として函館どつく前～谷地頭間を直行しました。この時は車掌が乗車してツーマンによる運行となりました。

2016年3月26・27日には、北海道新幹線開業を記念し、39号「箱館ハイカラ號」、9602号とともに特別運行が行われました。

TV・映画などへの登場

TVや映画のロケにも度々用いられ、近年では2015年（平成27年）にNHKで放送されたブラタモリ「函館の夜景」や、2016年（平成28年）公開の映画「世界から猫が消えたなら」、2017年5月1日放送の日本テレビ系列「笑神様は突然に…」のロケに使用されました。

事故

1963年8月、宝来町電停付近のカーブで勾配による暴走が原因で524号が脱線し、対向の518号と正面衝突しました。これにより大破した518号は廃車となりました。

廃車

501（初代）・502：1973年（昭和48年）10月1日付
503・504・506：1985年（昭和60年）5月1日付
507・508：1986年（昭和61年）11月1日付
509：1996年7月20日付
510 - 512：1991年4月30日付
513 - 515：1992年（平成4年）9月30日付
516・517・519 - 521：1993年（平成5年）4月1日付
518：1964年（昭和39年）1月10日付（1963年8月の事故による廃車。台車と主電動機は706号に流用）
522・523：1993年（平成5年）5月15日付（2001・3001形導入による余剰）
524：1979年3月（昭和54年）
525：1994年3月（平成6年）3月31日付（2002・3002形導入による余剰）
526・527：1995年（平成7年）3月31日付（3003形導入による余剰）
528：1997年（平成9年）3月26日付
529：2007年3月31日付（9601形導入に伴う余剰。1007・1008号とともに2010年ごろまで放置されたが現在は解体撤去）

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