分倍河原の戦い (鎌倉時代)

分倍河原の戦い（1333年）

分倍河原の戦いは、鎌倉時代末期の元弘3年（1333年）5月15日・16日に、武蔵国多摩川河畔の分倍河原（現在の東京都府中市）で行われた、鎌倉幕府軍と新田義貞率いる反幕府軍との間の合戦です。

背景：新田義貞の挙兵と進撃

新田義貞は、元弘3年5月8日に上野国で鎌倉幕府打倒の兵を挙げました。当初、その兵力はわずか150騎ほどでしたが、利根川を越える頃には、越後や甲斐、信濃の武士たちが合流し、7,000騎にまで膨れ上がりました。

さらに、足利高氏（尊氏）の嫡子・千寿王（義詮）が合流すると、上野、下野、上総、常陸、武蔵など、幕府に不満を持つ武士たちが次々と集まり、新田軍は20万を超える大軍となりました。新田軍は鎌倉街道沿いに南下し、小手指原や久米川で幕府軍を破り、最後の要害である分倍河原へと進軍しました。

合戦の経過：初日の敗北と逆転

幕府は、北条泰家を大将とする15万の大軍を派遣し、分倍河原で新田軍を迎え撃ちました。5月15日、新田軍は幕府軍に総攻撃を仕掛けましたが、数の差により全滅状態となり、堀兼（現在の埼玉県狭山市）まで敗走しました。新田義貞自身も、手勢を率いて辛うじて脱出するほどの危機的状況でした。

しかし、その夜、三浦氏一族の大多和義勝が、相模国の武士を率いて新田軍に加勢しました。大多和氏は北条氏と親しい関係にありましたが、北条氏に見切りをつけ、新田軍に味方したのです。また、大多和義勝は足利一族の高氏から養子に入った人物であり、この行動には足利氏の意図があったとも考えられています。

義貞は、大多和義勝が幕府軍に加勢するという偽の情報を流し、幕府軍を油断させました。翌16日早朝、義勝を先鋒とした新田軍は、2万の兵力で分倍河原に奇襲を仕掛けました。幕府軍は虚報を信じて警戒を怠っており、新田軍の大勝利に終わりました。北条泰家は敗走し、幕府軍は壊滅的な打撃を受けました。

考察・影響：鎌倉幕府滅亡への転換点

分倍河原の戦いにおける新田軍の勝利は、その後の戦局を大きく左右しました。この勝利により、幕府軍は完全に守勢に転じ、新田軍には関東各地から援軍が続々と集まりました。新田軍は鎌倉を攻略し、東勝寺合戦を経て、鎌倉幕府は滅亡へと向かうことになります。

史跡

府中市分梅町の新田川分梅公園には、分倍河原古戦場碑があります。また、分倍河原駅前には新田義貞の像が建てられており、鎌倉方面である南を向いています。

参考文献

奥富敬之『上州 新田一族』新人物往来社、1984年。
峰岸純夫『新田義貞』吉川弘文館〈人物叢書〉、2005年。
* 府中市郷土の森博物館編集・発行 『府中市郷土の森博物館 特別展 合戦伝説―新田義貞と分倍河原合戦ー』 1994年

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