分子モーター

分子モーターとは

分子モーターとは、細胞内でエネルギーを機械的な運動に変換する分子の総称です。この分子モーターの働きにより、細胞は形を変えたり、移動したり、内部で様々な分子を輸送したりすることができます。分子モーターは、生命活動の根幹を支える重要な役割を果たしています。

類似の用語として、タンパク質モーター、モータータンパク質などがあります。

分子モーターの種類

分子モーターには、大きく分けてリニアモーターとロータリーモーターの2種類があります。

リニアモーター

リニアモーターは、特定の軌道上を直線的に運動するモーターです。代表的なものとして、以下のものがあります。

ダイニンとキネシン: 微小管を足場として、それぞれ逆方向に移動します。
ミオシン: アクチンフィラメントと相互作用し、筋肉の収縮などを引き起こします。

これらのモータータンパク質は、ATP（アデノシン三リン酸）を消費して、筋肉の動き、細胞分裂時の染色体移動、小胞輸送など、細胞の重要な機能を実行します。一般的にモータータンパク質という場合は、これらのリニアモーターを指すことが多いです。

ロータリーモーター

ロータリーモーターは、回転運動を行うモーターです。代表的なものとして、以下のものがあります。

鞭毛モーター: 細菌の鞭毛を回転させ、運動を制御します。細胞内外のイオン濃度勾配をエネルギー源として利用します。
イオン輸送性ATPase: イオン輸送を行う酵素で、イオン駆動型とATPをエネルギー源とするタイプがあります。

分子モーターのエネルギー源

分子モーターが運動するために必要なエネルギー源は、モーターの種類によって異なります。ATP（アデノシン三リン酸）やイオン濃度勾配などが利用されます。

ATP: 化学エネルギーを直接利用するモーター（キネシン、ダイニン、ミオシンなど）で使用されます。
イオン濃度勾配: 細胞膜内外のイオン濃度差を利用するモーター（鞭毛モーターなど）で使用されます。

分子モーター研究の重要性

分子モーターは、ナノテクノロジー分野においても注目されており、分子機械の構成要素としての応用が期待されています。分子モーターの動作原理を解明し、人工的に合成することで、様々な分野への応用が期待されています。

関連項目

ブラウン・ラチェット
廣川信隆
分子マシン
分子力学法

外部リンク

MBInfo - Molecular Motor Activity/2%3A_Cell_Chemistry_and_Biosynthesis/2.12%3A_How_Cells_Obtain_Energy_from_Food/I._Molecular_Motors)
MBInfo - Cytoskeleton-dependent MBInfo - Intracellular Transport
Cymobase - A database for cytoskeletal and motor protein sequence information
Jonathan Howard (2001), Mechanics of motor proteins and the cytoskeleton. ISBN 9780878933334

もう一度検索