刑部省 (明治時代)

刑部省（ぎょうぶしょう）

刑部省は、明治時代初期の太政官制における二官六省の一つで、刑事司法を管轄した省です。

概要

1868年（明治元年）に定められた政体書では、太政官の権力分掌のため七官が設置されました。そのうち刑法官は刑事裁判事務を担い、その長である知官事は「総判執法守律監察糺弾捕亡断獄」を職掌としました。

1869年（明治2年）の職員令により七官制が廃止され、二官六省制が導入。刑部省は、刑部卿を長とし、「鞠獄定刑名決疑獄」を職掌として、刑法官の刑事裁判事務や法典編纂事業を引き継ぎました。しかし、刑部省の管轄は東京府に限定され、それ以外の地域の断獄事務は府県の地方官が処理していました。

刑部省には、職員令に基づき、裁判実務を処理する判事と解部、捕亡を担当する逮部が置かれ、11月5日には逮部司が設置されました。

一方、職員令制定に先立ち、刑法官の下にあった監察司が廃止され、弾正台が設置されました。弾正台は、刑法官の職掌のうち「監察糺弾」事務を引き継ぎ、官員の非違行為の糺弾を職務としました。職員令においても刑部省とは別に置かれました。刑法官の事務を引き継いだ両者は、監察や捕亡事務などで職掌が重複し、権限の所在をめぐる対立と混乱を引き起こしました。

1871年（明治4年）7月9日の太政官布告により、刑部省と弾正台は廃止・統合され、司法省が設置されました。同時に出された太政官沙汰により、刑部省と弾正台が所管していた全ての事務は司法省に引き継がれました。

参考文献

浅古弘、伊藤孝夫、上田信廣、神保文夫編（2010）『日本法制史』青林書院
伊藤孝夫（2023）『日本近代法史講義』有斐閣
大庭裕介（2020）『司法省と近代国家の形成』同成社
横山晃一郎（1985）「明治5年後の刑事手続改革と治罪法」法制研究51巻3/4号

関連項目

日本法制史
近代日本の官制

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