初午祭 (鹿児島神宮)

初午祭とは

鹿児島県霧島市の鹿児島神宮で毎年開催される初午祭は、旧暦1月18日の次の日曜日に執り行われる祭事です。この祭りの最大の特徴は、「鈴かけ馬踊り」と呼ばれる独特な風習で、例年10万人以上の観光客が訪れます。一般的な初午祭とは異なり、鹿児島神宮ならではの特色を持つ祭りとして知られています。

初午祭の由来

初午祭の起源は室町時代に遡ります。当時の領主であった島津貴久が、鹿児島神宮の改築工事中に見た夢がきっかけとされています。夢の中で馬頭観音が現れ、自身が顧みられていないことを嘆き、堂を建てて祀ることを望みました。その願いが叶えば、この国を守護すると約束したとされます。

島津貴久が夢の内容を神官に伝えたところ、神官も同じ夢を見ていたことが判明。さらに、高僧である日秀上人も同様の夢を見たという話を聞き、三者の意見が一致。獅子尾丘に正福院観音堂を建立し、碁盤を母材とした観音像が祀られることになりました。この夢を見た日が旧暦1月18日であったことから、その日が縁日として定められ、多くの鈴かけ馬が参拝に訪れるようになったと伝えられています。また、日秀上人は鹿児島神宮の再建にも尽力したとされています。

鈴かけ馬踊り

鈴かけ馬踊りは、鈴を多数つけた胸飾りや、花や錦で飾られた鞍をつけた馬を、鐘、太鼓、三味線などの音楽に合わせて足踏みさせ、馬が踊っているように見せるものです。祭りに参加する馬は、地元有志によって用意された約20頭で、それぞれの馬には数十名の踊り連が続きます。馬たちは1ヶ月以上前から踊りの練習を重ね、祭り後も足踏みの癖が残ると言われています。

馬踊りの起源は、馬の健康や多産、農作物の豊穣を願うものでしたが、現在では厄除けや歳祝い、商売繁盛も祈願されるようになりました。また、上棟式や婚礼などの祝いの場で、馬を伴わずに踊り子だけで馬踊りを行うこともあります。

この馬踊りの風習は、山の神が馬に乗って田の神になるという古い伝承に基づき、南九州各地で行われています。鹿児島神宮の他、出水市高尾野町の紫尾神社、湧水町の若宮八幡、伊佐市菱刈下手の水天神社、伊佐市大口山野の保食神社、日置市の湯之元温泉などでも行われていたとされています。

2002年には、「薩摩の馬踊りの習俗」として国から「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選定されました。

参考資料

下野敏見 『南九州の民俗芸能』 未來社、1980年
三ツ石友三郎編 『隼人町郷土誌』 隼人町、1985年

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