別所キミヱ

別所 キミヱ

別所キミヱ（べっしょ キミヱ、1947年12月8日生まれ）は、日本を代表するパラ卓球選手の一人です。クラス5に分類される車椅子選手として長年活躍し、特にパラリンピックには2004年のアテネ大会から2016年のリオデジャネイロ大会まで、4大会連続で出場するという偉業を成し遂げました。リオデジャネイロ大会に出場した際は68歳で、これは当時の日本人パラリンピック選手の最高齢記録として特筆されます。試合中にはトレードマークである蝶の髪飾りを着けており、その姿から「バタフライ・マダム」あるいは「マダム・バタフライ」といった愛称でも多くの人々に親しまれています。

別所氏は、1947年12月8日、広島県安芸太田町で8人きょうだいの末っ子として生を受けました。地元の広島県立加計高等学校を卒業後、敷島製パンに入社。20歳で結婚し、兵庫県明石市に移り住みます。

しかし、穏やかな生活は長く続きませんでした。1987年9月、夫を突然のくも膜下出血で亡くすという悲劇に見舞われます。その2年後の1989年春には、自身も腰と足に痺れを感じ始め、約5か月に及ぶ精密検査の結果、希少がんである仙骨巨細胞腫が原因であることが判明します。1990年1月に手術を受け、半年後には退院したものの、リハビリ中に病気が再発し、医師からは再び歩けなくなる可能性を宣告されます。1991年1月の再手術では一時心臓が止まる危機も乗り越え、約10か月の入院期間を経て帰宅。この手術を経て、以降は車椅子での生活を送ることになります。

車椅子での生活が始まったばかりの頃、別所氏は将来への希望を見失いかけていました。そんな中、1992年頃に新聞で車いすバスケットボールの記事を目にします。同じ障害を持つ人々がスポーツを通じて活動する姿に感銘を受け、体育館を訪れた別所氏は、そこで練習風景を目の当たりにして大きな刺激を受けます。自分にできるスポーツは何かと考えた末、翌週には卓球の練習を始めました。

最初は趣味として始めた卓球でしたが、次第にその奥深さに魅せられ、真剣に競技に取り組むようになります。レベルアップのために日本各地へ練習相手を求めて遠征するまでになり、その努力は着実に実を結びます。1994年には日本肢体不自由者国際クラス分け卓球選手権（現在の国際クラス別パラ卓球選手権）で初優勝を飾り、1997年には初めて全国大会の舞台に立ちました。国際大会にも挑戦し、1999年のアジア大会（フェスピック）では、当時の世界チャンピオンであった香港の選手を破るという快挙を成し遂げ、国際大会での初勝利を挙げました。世界ランキングが20位台後半となった頃、世界大会で欠場者が出たことから急遽出場を打診され、初の国際主要大会でベスト4入りを果たしました。

パラリンピックには、2004年アテネ大会で6位、2008年北京大会、2012年ロンドン大会、2016年リオデジャネイロ大会ではそれぞれ5位という成績を収めています。特にリオ大会での68歳という年齢は、日本人パラリンピック選手の最高齢記録として歴史に刻まれました。

競技人生において、別所氏は幾度となく困難に直面しながらも、不屈の精神で乗り越えてきました。2018年には交通事故に遭い数か月間卓球ができない状況に追い込まれましたが、事故後初の国内国際大会で優勝。2019年には帯状疱疹や転倒による坐骨骨折といったアクシデントにも見舞われながら、国際大会で上位入賞を果たすなど、その強靭な精神力と卓球への情熱を示し続けました。2021年の東京パラリンピック最終予選では惜しくも出場権を逃しましたが、競技への意欲は衰えず、2022年からはダブルス種目にも積極的に出場。同年7月のタイオープンでは、中本亨選手との混合ダブルスで優勝を飾るなど、新たな挑戦を続けています。

長年の競技活動を通じて、国際クラス別パラ卓球選手権で2017年まで12年連続優勝、ジャパンオープン肢体不自由者選手権大会（車いすの部）で2018年まで7年連続優勝といった圧倒的な国内での強さを示し、その他多くの国際大会でも上位入賞を果たしています。その生き様は多くの人々に勇気と希望を与え、自身の経験を綴った著書『たちあがるチカラ』（Nanaブックス、2013年）も出版されています。

もう一度検索