制限連記制

制限連記制とは

制限連記制は、選挙において、有権者が選挙区の定数よりも少ない数の候補者に投票する制度です。最多得票を得た候補者から順に当選者が決まります。この制度は、単純小選挙区制や完全連記制とは異なり、少数グループが議席を獲得する可能性を高めることを目的としています。

制限連記制の仕組み

例えば、定数3の選挙区で、有権者が2票を持つ場合を考えてみましょう。有権者は、3人の候補者の中から2人を選んで投票します。この際、3票目を投じることはできません。各候補者が得た票数を集計し、上位3名が当選となります。

実践と問題点

制限連記制は、少数派の代表選出を可能にする一方で、いくつかの問題点も抱えています。その一つが、候補者の数によって支持票の効果が変動することです。例えば、ある町で54%の有権者がA党を支持し、46%がB党を支持しているとします。単純小選挙区制や完全連記制では、A党がすべての議席を獲得する可能性がありますが、制限連記制では、B党が1議席を獲得できる場合があります。

しかし、A党が3人の候補者を擁立した場合、支持票が分散し、結果的に1議席しか獲得できない可能性もあります。一方、B党が2人の候補者のみを擁立し、支持票を集中させれば、より多くの議席を獲得できる可能性があります。このように、制限連記制は、政党の戦略によって結果が大きく左右されることがあります。

この例からわかるように、制限連記制は完全な比例代表制ではありません。最大政党が組織をまとめ、支持票の配分に成功した場合、少数派の代表選出が阻害されることもあります。1880年にイギリスのバーミンガムで行われた下院議員選挙では、有権者が最大2票を投じることができましたが、最大政党が支持票を効率的に配分し、有利な結果を得ました。

歴史と現在の利用状況

制限連記制は、1867年から1885年の間、イギリス議会のいくつかの選挙区で使用されました。また、イタリアでも19世紀の終わりまで使用されていました。現代では、スペイン本土からスペイン上院議員を選出する際に使用されています。アメリカ合衆国では、コネチカット州やペンシルベニア州など、一部の州で地方議員の選出に採用されています。

ジブラルタルでは、15議席に対して有権者が8票を投じる過半数連記制が採用されています。日本においては、1946年の第22回衆議院議員総選挙で、定数10以下の選挙区では2名連記、定数11以上の選挙区では3名連記という制限連記制が実施されました。

関連項目

大選挙区制
累積投票
単記非移譲式投票
完全連記制

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