副田吉成

副田吉成：豊臣秀吉の義兄、激動の時代を生きた武将

副田吉成（そえだ よしなり）は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将です。通称を甚兵衛尉といい、豊臣秀吉の妹である朝日姫（後の南明院）の最初の夫であったことで知られています。彼の生涯は、激動の時代の中で、武将としての活躍と、運命に翻弄された人間模様を映し出しています。

生い立ちと織田家への仕官

尾張国愛知郡烏森（現在の愛知県名古屋市中村区）に生まれた副田吉成は、若い頃から織田信長の家臣であった羽柴秀吉（後の豊臣秀吉）に仕えました。秀吉の妹である朝日姫を妻として迎え、親族としての絆を深めながら、数々の戦で武功を重ねました。

戦場での活躍

天正5年（1577年）、秀吉の弟・羽柴秀長による但馬国侵攻に従軍し、若桜鬼ヶ城攻めに参加。その後も、秀長の与力として多伊城（指杭城）を与えられ、地域を治める役割を担いました。天正8年（1580年）には、三木合戦終結後の播磨国内の城破却において、神吉城の破却を担当するなど、着実に武将としての実績を積み重ねていきます。さらに、天正9年（1581年）には、因幡鳥取城攻撃にも参加し、秀吉の天下統一を支える一員として活躍しました。

本能寺の変と失脚

天正10年（1582年）、本能寺の変が発生すると、その混乱に乗じた海賊一揆によって多伊城を奪われてしまいます。この時、吉成は辛くも城から逃れることに成功しますが、この一件は彼の運命を大きく左右することになります。同年10月、秀吉が信長の葬儀を大徳寺で行った際、杉原家次・桑原貞也とともに奉行を務め、秀吉からの信頼は厚かったように見えましたが、多伊城失陥の責任を問われたのか、その後の彼の立場は大きく変化します。

朝日姫との離縁、その後の人生

吉成の妻であった朝日姫は、天正13年（1585年）に秀吉の命により徳川家康の正室として嫁ぐことになります。この時、吉成と朝日姫は既に離縁していたとされています。離縁の理由については諸説あり、山鹿素行の『武家事紀』では、多伊城失陥によって秀吉の不興を買ったことが原因とされています。しかし、天野信景の『塩尻』によれば、朝日姫が家康に嫁ぐ際、秀吉から5万石の加増を条件に離縁を迫られましたが、吉成はこれを拒否し、出家して尾張烏森に隠棲したとされています。真実は定かではありませんが、吉成の人生において、この離縁は大きな転換点となったことは確かでしょう。

副田氏のその後

副田氏の家督は、伊勢国松坂藩士・渡辺甚左衛門の子である九右衛門秀綱が烏森に来て継承し、その子孫は尾張藩士として続きました。吉成の血筋は、彼の隠棲後も、新たな形で歴史を刻んでいくことになります。

後世への影響

副田吉成は、数々の歴史ドラマにも登場しています。特に朝日姫との離縁劇は、多くの物語で脚色され、人々の興味を惹きつけてきました。彼は、激動の時代を生き抜いた武将として、また、大名たちの思惑に翻弄された人物として、後世に語り継がれています。

まとめ

副田吉成は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将であり、豊臣秀吉の義兄として、歴史に名を残しました。武将としての活躍と、朝日姫との離縁という個人的な出来事が複雑に絡み合い、その生涯は波乱に満ちたものでした。彼の人生は、激動の時代を生きる人々の、喜び、悲しみ、そして運命の不可思議さを映し出しています。

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