川本耕次

川本耕次：伝説の編集者、小説家、そして文化を揺るがした仕掛け人

川本耕次（1953年5月3日 - 2022年12月26日）は、漫画編集者、官能小説家、カメラマン、ライター、そして批評集団『迷宮』のメンバーとして、昭和から平成にかけての日本のサブカルチャーシーンに大きな足跡を残した人物です。みのり書房、アリス出版、群雄社出版といった出版社で、漫画、官能小説、自販機本などの編集に携わり、数々の伝説的な作品やブームを生み出しました。

伝説の幕開け：三流劇画ブームと『迷宮』

静岡県三島市出身の川本は、大学在学中から貸本劇画の研究に没頭し、その縁で米沢嘉博や長谷川秀樹らと出会います。彼らと共にコミックマーケットの母体となる批評集団「迷宮」に参加し、同人誌『漫画新批評大系』に「三流劇画ミニマップ」を寄稿。これが、当時アンダーグラウンドで盛り上がりを見せていた三流劇画ブームの火付け役となりました。

ニューウェーブ漫画誌『Peke』創刊

1977年、川本はみのり書房に入社し、『官能劇画』の編集を担当。その後、1978年には『月刊OUT』で吾妻ひでお特集を企画し、翌年にはニューウェーブ漫画誌『Peke』を創刊しました。同誌では、吾妻ひでおにSFパロディ作品を描かせたほか、内山亜紀やさべあのまといった新進気鋭の漫画家をデビューさせ、日野日出志を復活させるなど、新たな才能の発掘に力を注ぎました。

『少女アリス』編集長：ロリコンブームの仕掛け人

1979年、川本はアリス出版に移籍し、自販機本『少女アリス』の2代目編集長に就任。同誌では、寺山久美をモデルにした写真撮影を敢行し、吾妻ひでおに美少女[[漫画]]「純文学シリーズ」を依頼するなど、ロリコンブームを牽引しました。特に、吾妻ひでおの「純文学シリーズ」は、美少女のかわいらしさとエロティシズムをテーマにした画期的な作品群として、後の美少女コミック（萌え系エロ）に大きな影響を与えたとされています。川本は吾妻ひでおにとって「転機となる作品を描く時に現れる幸運を運ぶ人」と言われ、その編集者としての才能を高く評価されていました。

群雄社出版での活動：官能小説家、編集者、そしてプロデューサー

1980年、アリス出版から分派した群雄社出版に移籍した川本は、官能小説家、エディター、カメラマンとして活動を開始します。官能小説レーベル「シガレットロマンス」からロリータをテーマにした小説を複数発表し、その名を広く知られることとなりました。また、自販機本時代や「迷宮」の人脈を活かし、『街には女の子たちがいっぱい』『ロリコン大全集』などの伝説的なロリコンムックを編集。ロリータアイドル・山添みづきの写真集を企画出版するなど、プロデューサーとしても活躍しました。さらに、A5判ムック『少女愛専門誌・ありす』を創刊するなど、ロリコン文化の発展に貢献しました。

『ロリコンHOUSE』監修と晩年

1984年からは、読み物中心のロリータ総合誌『ロリコンHOUSE』を創刊号から監修し、「処女太り」という造語を提唱しました。その後、エロ本業界から退き、エスニック雑貨店「えすの屋」を開店。晩年は、家業を継ぎ実業家として活動する傍ら、WEBサイト『ネットゲリラ』の管理人としても活躍しました。

2022年12月26日、心不全のため69歳で死去。その生涯は、漫画、小説、サブカルチャーなど、様々な分野で大きな影響を与え続けました。

評価と影響

川本耕次は、三流劇画の研究者、評論家、自販機本制作者、ロリコンブームの仕掛け人、そしてニューウェーブコミック誌の創刊者として、オタク文化の黎明期を築いた重要な人物として評価されています。彼の編集者としての先駆的なアプローチ、新たな才能の発掘、そして常に時代を捉えようとする姿勢は、後のクリエイターたちに大きな影響を与えました。

作品リスト

川本耕次は、その多岐にわたる活動の中で、数多くの作品を世に送り出しました。以下に主なものを紹介します。

著書
『世紀末エロ写真館』（共著）
『アジア雑貨屋さんの仕入れ術』（やまだひろなが名義）
『面白いほどよくわかるタイ裏ワザの旅』（やまだひろなが名義）
『史上最強のタイみやげ』（やまだひろなが名義）
『ポルノ雑誌の昭和史』

監修・編集
『文化総合雑誌・ぶかどん』
『ぶかどん臨時別冊増刊号・A5判の夢―貸本漫画小論!』
『三流劇画ミニマップ』
『官能劇画』
『月刊Peke』
『月刊OUT』
『月刊COMIC AGAIN』
『別冊新評 三流劇画の世界』
『さべあのま作品集 シングル・ピジョン』
『少女アリス』
『ガール&ガール』
『サクラ・ムック―7 街には女の子たちがいっぱい』
『ロリコン大全集』
『少女体験』
『ありす』
『アリス倶楽部』
『ロリコンHOUSE』
『セピア色の少女たち―アンティーク・ポストカード・コレクション』

官能小説
『思春期症候群』
『エロティック・トラウマ 教師と十二歳の少女の恋物語』
『美少女博物館 欲望のチーズケーキ』
『処女喪失』
『ナイロン100％スクール水着』
『美処女喪失』
『トワイライトタイム 茉莉子冬物語』
『思春期そーしつ休暇』
『美少女の体験』
『花芯伝説 セーラー服も女教師も人妻も』
『早熟の部屋 長編官能小説』
『淫らな相姦日記妹の下着調べ』
『早熟の三姉妹 長編官能小説』
『義妹桃肉いじめ』
『セーラー服変態図鑑』
『美処女欲情』
『美少女学園超エッチ遊び』

写真集
『川島めぐみ ときめきのむこうがわ』
『橋本純子 胸いっぱいの初恋』
『山添みづき 十二歳の砂時計』
『山添みづき13歳 ロリータ・アイドル まだ愛はしらない』
『処女香 一ノ瀬悠写真集』
『天然生娘 阿立未来写真集』
『伝説の美少女 西村理香』
『さくら姫 浜ひとみ写真集』
『雛乙女 藍沢ゆうな写真集』
『現代に甦る「ビニ本」NUDE』
『喪失日記 小倉杏写真集』

対談・座談会
『プレイガイドジャーナル』
『別冊新評 三流劇画の世界』
『ふゅーじょんぷろだくと』
『秘密の花園倶楽部』

川本耕次の多岐にわたる活動は、日本のサブカルチャー史において決して忘れることのできない大きな足跡を残しました。

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