劉寒吉

劉寒吉（りゅう かんきち）

劉寒吉（1906年9月18日 - 1986年4月20日）は、日本の昭和期に活躍した小説家です。本名は濱田陸一（はまだ りくいち）といいます。福岡県小倉市（現在の北九州市小倉北区）で、旧小倉藩の御用達商人であった濱田家の長男として生まれました。幼少期から文学に親しみ、小倉市立小倉商業学校（現福岡県立小倉商業高等学校）在学中には、同人誌『悟桐』を創刊するなど、早くから文才を発揮していました。

文学活動

1925年には同人誌『公孫樹』を創刊し、本格的に文学の道へと進みます。1938年には『九州文学』の創刊に携わり、1983年の休刊まで48年間、編集・経営の中心人物として活躍しました。『九州文学』は、九州の文学界を牽引する重要な役割を果たし、多くの文学者を輩出しました。

劉寒吉の作品は、歴史小説や時代小説が中心で、郷土の歴史や文化を深く掘り下げたものが多く見られます。その作風は、重厚で格調高く、人間心理を緻密に描いているのが特徴です。

代表作としては、長編歴史小説『山河の賦』や、芥川賞候補作となった「人間競争」「翁」、直木賞候補作となった「十時大尉」「風雪」などがあります。

文化活動

文学活動と並行して、劉寒吉は北九州地域の文化振興にも尽力しました。1960年には小倉郷土会会長に就任し、考古学、民俗学、文化財保護などの分野を包含した組織に改編、運営を行いました。また、文化財保護の重要性を訴え、森鷗外旧居や北原白秋生家の復元に尽力するなど、地域文化の継承に大きく貢献しました。

人物像

ペンネームの「劉」は、朝鮮で知り合った青年の名前から、また「寒吉」には「心寂しい男」という意味が込められています。このペンネームには、劉寒吉の文学に対する姿勢や、内面的な心情が表れていると言えるでしょう。彼の文学碑は、北九州市立中央図書館前庭にあり、多くの人々に親しまれています。文学碑に刻まれた「吹くは風ばかり」という言葉は、劉寒吉が友人に贈った色紙の言葉で、彼の文学観を象徴する言葉として知られています。

毎年命日の4月20日には、母校である福岡県立小倉商業高等学校の生徒による「碑前の集い」が文学碑の前で行われ、その功績を偲んでいます。

その他の活動

詩誌『稜体発光』『とらんしっと』の創刊
小倉郷土会の結成、会長就任
北九州市文化財調査委員会の委員長就任
北九州市小倉南区西谷地区、頂吉地区の民俗調査隊を編成、隊長就任
日本民俗学会評議員
北九州市の文化財を守る会常任理事
北九州市立郷土資料館運営委員長
北九州市立美術館建設委員長
北九州市歴史博物館協議会委員長
西日本文化賞受賞
森鴎外旧居復元に尽力

主な著作

『山河の賦』
『敵国降伏 国難元寇記』
『世間ばなし』
『炎の記録』
『天草四郎』
『九州工業大学五十年史』
『ザビエル渡来物語・島原の乱』
『松本健次郎伝』
『黒田騒動』
『竜造寺党戦記 竜造寺と鍋島』
『長崎歴史散歩』
『片すみの椅子』
『九州芸術風土記』
『わが一期一会』
『劉寒吉自選作品集』
『劉寒吉詩集』
『長崎小話 奉行所犯科帳より』

まとめ

劉寒吉は、小説家としてだけでなく、郷土史家、文化財保護活動家としても、多岐にわたる分野で才能を発揮しました。その功績は、北九州地域だけでなく、日本の文化史においても重要な位置を占めています。彼の文学作品や文化活動は、後世に大きな影響を与え続けています。

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