加曽利貝塚

加曽利貝塚：縄文時代を今に伝える巨大貝塚

加曽利貝塚は、千葉県千葉市若葉区に位置する、縄文時代の貝塚を伴う環状集落の遺跡です。その規模は日本最大級であり、学史上においても非常に重要な遺跡として知られています。1971年に北貝塚、1977年に南貝塚がそれぞれ国の史跡に指定され、2017年には両貝塚を合わせた区域が国の特別史跡となりました。この遺跡からは、縄文中期後半の加曽利E式、縄文後期後半の加曽利B式といった、土器編年の指標となる重要な土器が出土しています。

遺跡の概要

加曽利貝塚遺跡は、都川の支流である坂月川を遡った舌状台地に位置し、東西約500メートル、南北約800メートルの範囲に広がっています。貝塚を含む地層は、台地の東側縁辺に東西300メートル、南北400メートルに分布しています。この貝塚は、異なる時期に形成された2つの環状集落によって構成されており、北貝塚と南貝塚が連結した独特な8の字形（双環状集落）をしています。北貝塚は直径約130メートル、南貝塚は長径約170メートルで、全体で約13.4ヘクタールという広大な面積を誇り、世界でも最大級の貝塚とされています。

現在、加曽利貝塚の敷地は加曽利貝塚公園として整備されており、千葉市立加曽利貝塚博物館が併設されています。この地域一帯には、縄文中期の小型貝塚や住居跡も広く分布しており、当時の人々の生活を偲ぶことができます。約7000年前の住居跡も発見されていますが、当時の貝塚は残存していません。巨大な貝塚の形成が始まったのは、約5000年前の縄文中期からです。

加曽利北貝塚は、縄文中期（約5000 - 4000年前）に約1000年かけて形成されました。初期には小規模な貝塚と住居がありましたが、その後、貝や土器片などが廃棄・集積され「廃棄帯」と呼ばれる堆積物層が形成されました。その上に、直径約130メートルの環状の貝塚が作られました。縄文後期になると、北貝塚は使われなくなり、その南側に南貝塚が作られ始めました。南貝塚は縄文後期（約4000 - 3000年前）に約1000年かけて形成され、長径約170メートルの馬蹄形の貝塚となりました。南貝塚では、イヌの骨が人間と共に埋葬されていることが確認され、大きな話題となりました。

発見と保存

加曽利貝塚が初めて学界に紹介されたのは、1887年の上田英吉による記録でした。その後、1907年の調査で「本邦第一の貝塚」であることが確認されました。1963年頃には、東洋プレハブ工業が土地を買収し、南貝塚の一部を破壊する事態が発生しました。これを受けて、地元高校教師であり考古学者でもあった武田宗久氏らが保存運動を展開し、市民の支持を得て、1964年に千葉市が北貝塚の用地を買収、公園として整備を開始しました。

1966年には、出土品を展示する千葉市立加曽利貝塚博物館が開館。その後、南貝塚の土地も買収され、1971年に北貝塚、1977年には南貝塚が国の史跡に指定され、貝塚のほぼ全域が保存されることになりました。2017年には、貝塚としては初の国の特別史跡に指定されています。

現在、加曽利貝塚では、縄文時代の生活を体験できるイベントが定期的に開催されており、多くの人々が訪れています。最寄りの駅は千葉都市モノレール2号線の桜木駅で、駅から徒歩約15分です。