加藤利男

加藤利男（かとう としお、1952年4月20日 - ）は、日本の元官僚であり、退官後も公共的な分野で重要な役職を歴任した人物です。愛媛県新居浜市に生まれ、長年にわたり国土行政、特に都市計画や地域活性化においてその手腕を発揮しました。官僚としては建設省（後の国土交通省）を中心にキャリアを重ね、内閣府政策統括官や国土交通省の要職を務めました。退官後も、独立行政法人住宅金融支援機構理事長や東京都都市計画審議会会長といった重責を担い、日本の社会基盤整備や政策決定に関与し続けました。

加藤氏は愛媛県立新居浜西高等学校を卒業後、1976年に一橋大学商学部を修了し、同年、建設省に入省しました。入省後は、都市局、住宅局、建設経済局など、建設行政の中枢となる部署で多様な経験を積みました。特に都市計画の分野に深く関わり、専門知識を培っていきました。

キャリアの進展に伴い、建設省都市計画課の課長補佐や、都市局都市計画課長といった都市行政の要職を歴任しました。また、内閣官房にも出向し、内閣参事官や総理大臣官邸整備企画室次長を務めるなど、省庁の枠を超えた幅広い視野を養いました。2001年には内閣府大臣官房会計課長に就任。この時期、外務省における不正経理問題が発覚し、会計担当者として被害届の提出など、事態の収拾に向けた対応にあたりました。

2005年には国土交通省大臣官房審議官（都市・地域整備局担当）として、地方都市の再生に不可欠な法改正の策定を主導しました。これは、従来の都市政策がもたらした郊外への大型店進出と中心市街地の衰退という課題に対し、抜本的な転換を図るものでした。具体的には、改正都市計画法、大規模小売店舗立地法、中心市街地活性化法という、いわゆる「まちづくり3法」の改正案策定を担当。郊外への大型店の出店を原則として抑制し、中心市街地への出店を促すことで、賑わいの回復と地域経済の活性化を目指す政策の立案に中心的な役割を果たしました。

こうした実績が評価され、2008年には国土交通省都市・地域整備局長に昇格。日本の都市行政の責任者として、政策の推進にあたりました。その後、2011年には組織再編に伴い国土交通省都市局長となり、さらに2012年には内閣官房地域活性化統合事務局長を務めるなど、国の中枢において、都市政策、地域活性化、防災といった幅広い分野で重要な役割を担いました。内閣官房においては、内閣副長官補付内閣審議官などを兼務し、内閣府の地域活性化関連の業務にも深く関与しました。

2013年に官僚を退いた後も、その経験と知見は多方面で活かされました。同年、内閣官房地域活性化統合事務局国家戦略特区総括官として、引き続き国の重要な政策に関わりました。また、公益財団法人自転車駐車場整備センター理事長を経て、2015年には独立行政法人住宅金融支援機構の理事長に就任。住宅金融の安定供給と国民生活の向上に貢献しました。

さらに、2017年には東京都都市計画審議会会長に就任し、首都東京の未来像を描く上で中心的な役割を果たしました。2019年には、東京都の重要な都市計画に関する指針となる「東京における土地利用に関する基本方針」について、小池百合子東京都知事へ答申を取りまとめました。このほか、2021年以降は一般財団法人高齢者住宅財団の理事長を務めるなど、高齢者関連の分野にも活動を広げています。

長年の功績が認められ、2022年には瑞宝重光章を受章しました。また、専門家として、「都市計画行政分野における国際協力」、「今後の宅地開発事業を考える」、「駐車場の整備とスムーズで安全な道路交通の確保をめざして」といった都市計画、宅地開発、道路交通などに関連する多数の論文や論考を発表しており、その知的な貢献も多岐にわたります。

加藤利男氏は、日本の国土、都市、地域の発展に長年貢献した官僚・実務家であり、特に都市計画分野においては、その専門性と実行力をもって重要な政策を推進しました。退官後も、住宅金融や東京の都市政策など、社会基盤に関わる要職を務め続け、その豊富な経験と識見を惜しみなく社会に還元している人物と言えるでしょう。

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