加藤喜美枝

加藤喜美枝（かとう きみえ）は、1913年（大正2年）6月18日に東京府（現在の東京都台東区山谷）で生まれ、1981年（昭和56年）7月29日に68歳で亡くなりました。彼女は、国民的歌手である美空ひばりの母として知られ、その本名は加藤キミでした。

喜美枝は、結婚後、夫の加藤増吉が営む鮮魚店「魚増」を切り盛りし、4人の子供たち（美空ひばり、佐藤勢津子、かとう哲也、香山武彦）を育てながら主婦業をこなしていました。1943年6月、夫が増吉が第二次世界大戦で海軍に出征することになり、その壮行会で、当時まだ少女だった和枝（後の美空ひばり）が父のために『九段の母』を歌いました。この時、和枝の歌声に感銘を受け、涙する人々を目の当たりにした喜美枝は、娘の歌唱力に人を惹きつける特別な力があることを確信し、地元の横浜近郊から和枝の歌による慰問活動を始めるようになりました。

和枝の芸名「美空ひばり」は、喜美枝が決定したものです。映画監督の沢島忠は、喜美枝を「娘のためなら、たとえ火の中水の中」と評しており、ひばりの成功における彼女の役割は非常に大きいものでした。喜美枝は、ひばりのマネージャーとして35年もの間、公私にわたり彼女を支え続けました。その献身ぶりは、「一卵性親子」とまで呼ばれるほどでした。

しかし、喜美枝の強い信念は、時にトラブルも引き起こしました。彼女は、ひばりと小林旭の結婚に最後まで反対し、「人生で一番不幸だったのは娘が小林と結婚したこと、人生で一番の喜びは娘が小林と離婚したこと」と公言していました。また、息子である哲也の賭博幇助容疑や任侠界との交際などの不祥事が原因で、全国の公会堂や市民ホールから「弟を出すならひばりに舞台を貸さない」と使用拒否の警告を受けることもありました。

喜美枝は1977年10月に大腸癌で入院し手術を受け、一時退院しましたが、その後も入退院を繰り返しました。そして、1981年7月、転移性脳腫瘍のため68歳で亡くなりました。彼女の法号は寳珠院慈徳日喜清大姉です。次女の佐藤勢津子によると、喜美枝が亡くなる数日前、ひばり、和也（哲也の子でひばりの養子、現ひばりプロダクション社長）、勢津子とともに庭を散策した際、「感謝」という言葉を最後に残したそうです。

喜美枝の出棺の際、ひばりは大きな叫び声を上げながら、かまどに向かって駆け出し、母の後を追おうとしました。その時、参列していた高倉健と萬屋錦之介の二人がひばりを阻止したというエピソードも残っています。加藤喜美枝は、美空ひばりの生涯において、最も重要な人物の一人であり、彼女の成功と人生に大きな影響を与えた存在でした。

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