加藤謙一

加藤謙一：才能を拓いた雑誌編集者

加藤謙一（1896年5月28日 - 1975年6月30日）は、昭和期に活躍した雑誌編集者です。彼は戦前、『少年倶楽部』の編集長として、戦後は『漫画少年』の編集・刊行を通じて、数多くの漫画家を世に送り出しました。

生い立ちと教員生活

青森県弘前市に生まれた加藤は、弘前中学校を卒業後、陸軍経理学校を目指しますが、体格検査で不合格となり、小学校の代用教員となります。その後、青森師範学校（夜間部）を卒業し、再び小学校教員として教鞭を執ります。教員時代、児童向け雑誌の自作が好評を博したことがきっかけで、「日本中の子どもに向けた雑誌を作りたい」という夢を抱き、1918年に上京。

講談社での活躍

上京後、なかなか編集者として採用されなかった加藤ですが、1921年に講談社に入社。『少年倶楽部』の編集長に抜擢されます。当時、『少年倶楽部』はライバル誌に大きく水をあけられていましたが、加藤は佐藤紅緑の『あゝ玉杯に花うけて』や田河水泡の『のらくろ』を連載し、雑誌の人気を飛躍的に向上させました。また、読者投稿欄の刷新や付録の充実など、様々な企画を打ち出し、『少年倶楽部』を60万部を超える人気雑誌へと育て上げました。

1932年からは企画室長として、未就学児童向けの『講談社の絵本』を創刊。一流の画家や作家を起用したことで、こちらもヒット作となります。太平洋戦争中は編集の第一線から離れ、講談社の役員を歴任しましたが、戦後の1948年に公職追放となり、講談社を辞職します。

『漫画少年』創刊と漫画家育成

公職追放後、加藤は1947年に学童社を設立し、『漫画少年』を創刊。手塚治虫の『ジャングル大帝』を連載し、大きな話題を呼びました。また、読者投稿欄に力を入れ、多くの漫画家志望者の作品を掲載。石ノ森章太郎や赤塚不二夫など、戦後を代表する漫画家を数多く輩出しました。

1950年に公職追放を解除された加藤は、学童社の社長に就任しますが、『漫画少年』は他の雑誌との競争に苦戦し、1955年に休刊。その後、古巣の講談社に顧問として復帰し、次男に学童社の社長を譲りました。

晩年と業績

加藤謙一は、雑誌編集者として、数多くの才能ある作家や漫画家を発掘し、育成しました。彼の編集者としての情熱と才能は、日本の児童文化、漫画文化の発展に大きく貢献しました。

1975年6月30日、加藤謙一は生涯を閉じましたが、彼の名は、日本の出版史、漫画史に永遠に刻まれています。

著作

『少年倶楽部時代 編集長の回想』講談社、1968年
『加藤謙一日記抄』加藤美紗子、1987年

参考文献

加藤丈夫『「漫画少年」物語 編集者加藤謙一伝』都市出版、2002年
手塚治虫：「加藤謙一氏と私」、寺田ヒロオ編集『「漫画少年」史』、湘南出版社 (1981年)

外部リンク

* 加藤謙一文庫（弘前大学附属図書館）

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