加賀七宝

加賀七宝

加賀七宝は、加賀地方に伝わる伝統的な七宝焼です。

歴史

その歴史は江戸時代中期に遡ります。当時、加賀藩では、釘隠しや引手といった建築金物に七宝が盛んに用いられました。特徴的なのは、鎚起しによって全体の形を作り出し、葉脈や鳥の羽の筋などを彫り込んで窪みを作り、そこに七宝を施すという高度な技術です。これは、金工技術を駆使した象嵌七宝と呼ばれる技法で、当時の職人たちの技術力の高さが伺えます。

特に有名なのは、5代藩主である前田綱紀が、将軍徳川綱吉を迎えるために建立した御成御殿で使用された釘隠です。「七宝花籠釘隠」や「七宝鳥籠釘隠」などが代表的な作品として知られています。これらの七宝作品は、前田綱紀が収集・分類した工芸品のコレクション「百工比照」の中にまとめられており、その一部は重要文化財に指定されています。

籠に施された文様は非常に精巧で、毛彫り、魚子地、墨指しなどの技術が用いられています。当時の釉薬は、現代のものと比べると透明感が少なく、洗練されているとは言えませんでしたが、全体としては華やかな意匠が際立っており、見る者を魅了します。

当時の記録である『参議公年表』には、工事を担った職人として、飾方の松井弥七郎、鉢阿弥源四郎、丹阿弥源四郎、錺屋清左衛門らの名前が記されており、これらの職人たちが釘隠の製作に深く関わっていたと考えられています。

また、天保から安政年間には、桃山時代から明治時代にかけて活躍した平田派の七宝師である春寛が加賀大聖寺に住み、その地で腕を振るいました。春寛の存在も、加賀における七宝の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。

文久3年（1863年）には、加賀藩13代藩主である前田斉泰によって成巽閣が建築されました。その謁見の間には、象嵌七宝の釘隠しが飾られており、現在でも見ることができます。

重要文化財

百工比照「七宝花籠釘隠」
百工比照「七宝鳥籠釘隠」
百工比照「七宝虫籠釘隠」
成巽閣 謁見の間「花文釘隠」

関連項目

七宝
京七宝
七宝 (技法)
前田育徳会
* 平田道仁

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