動物の同性愛

自然界において、動物が同性間で性的な行動を行ったり、絆を築いたりする現象は、驚くほど広く観察されています。これらの行動は単に交尾に限らず、多様な形態で現れますが、その背後にある動機や生物学的な意味については、まだ十分に解明されていません。この項目で扱う「動物」には人間（ヒト）は含まれません。

用語について

「同性愛（ホモセクシャル）」という言葉は、1868年にカール＝マリア・ケートベニーによって、人間の同性間の性的感情や行為を記述するために造語されました。この言葉を動物に適用することには、主に二つの観点から議論があります。一つは、動物の性行動の動機が人間ほど明確に理解されていないこと。もう一つは、「同性愛」という言葉に、人間以外の種には当てはまらないような西洋文化的な意味合いが含まれている可能性があることです。そのため、動物の同性間の行動を指す際には、様々な名称が使われることがあります。人間の性行動に関連する「ゲイ」や「レズビアン」といった単語は、動物に対しては通常使用されず、専ら「ホモセクシャル」が用いられます。

動物の選好や動機は、常に行動の観察から推測されるものです。長年にわたり、「同性愛」という言葉は動物の同性愛的な行動を指すために使われてきました。最近の研究では、この用語が同性の動物間のあらゆる性的な行動に対して広く使用されています。

研究の進展と動機に関する考察

動物の同性間の性行動は、かつては観察者の社会的な態度や偏見によって、大規模かつ公式に記録される機会が限られていました。しかし、現在では社会性のある鳥類や哺乳類、特に海洋哺乳類や霊長類において、これらの行動が広く観察されることが明らかになっています。

これらの行動の動機や機能については、いくつかの異なる説が提唱されています。一部の研究者は、刑務所内で見られる性行動のように、オスの社会における優劣関係や社会的支配に根ざしていると考えています。一方で、ジョーン・ラフガーデン、ブルース・ベージミル、ポール・ヴァージーといった研究者は、性的な機能が個体の優位性とは必ずしも関連せず、むしろ群れ内の連携を強化したり、社会的な結びつきを強めたりする役割を果たしている可能性を指摘しています。後者の見解を支持する例として、繁殖可能なメスがいるにもかかわらず異性とのつがいを拒否し、物理的に引き離そうとしても同性のパートナーとともにいようとするゲイのペンギンの存在が挙げられます。このような恒常的な同性のつがいに関する報告はまだ少ないものの、単婚ではない種（例えばヒツジ）において、安定した同性間の関係が科学的に確認される研究も増加しています。

具体的な観察例

ニホンザル: 群れによって頻度は異なりますが、同性間の関係が頻繁に見られます。メス同士は愛情表現や性的な活動を含む「求愛」を行い、数日から数週間にわたる絆を築くことがあり、強い友情に発展することもしばしばです。オスもまた、同年齢の複数のパートナーと愛情深いじゃれあいを伴う同性間の関係を持つ傾向があります。
ボノボ: オスもメスも異性間および同性間で活発な性行動を行います。特にメス同士の同性愛行動は顕著で、ボノボの性行動の約60%がメス同士で行われているという報告もあります。これは、他の多くの種と比較しても非常に高い頻度です。
アカゲザル: プエルトリコのサンティアゴ島での野生個体の観察では、オスがメスよりもオス同士で性行動を行う頻度が高いことが示されました。ある研究では、観察されたオスの72%がオスに対してマウンティング行動を行っていました。直接的な挿入の目視確認は困難でしたが、マウンティングされたオスの一部からは精子が検出されています。
ゾウ（アフリカゾウ、アジアゾウ）: オス同士が強い絆を結び、マウンティング行動を行います。これらの行動には、鼻を絡ませたり、互いの口の中に鼻を入れたりといった愛情表現が伴うことが多く、異性間の営みに類似しています。一時的なことが多い異性間の関係と異なり、オス同士の関係は年長の個体と若い個体が組む「仲間づきあい」として長期にわたることがあります。ゾウではオス・メス双方で同性間の性行動が広く観察されており、飼育下のアジアゾウでは性的行動の約45%が同性間で行われているという報告もあります。
アメリカバイソン: 同性愛行動が一般的に見られるウシ亜科の哺乳類です。オス同士の求愛やマウンティング、肛門への交尾器挿入が記録されています。メス同士のマウンティングもウシではよく見られます。また、間性のバイソンも確認されています。
キリン: ある研究者の報告によると、交尾するつがいの約9割がオス同士であったとされています。
ヒツジ: 2003年の研究では、オスの同性愛行動（雄羊の約8%）が、脳の特定領域（ヒツジ性的二型核、oSDN）の大きさと関連する可能性が示されました。同性愛傾向を示す雄羊のoSDNは異性愛傾向の雄羊より小さい傾向にありました。また、この領域におけるホルモン関連酵素アロマターゼの働きも異性愛傾向の雄羊で活発でした。これは性パートナー選好と脳の構造・ホルモン合成能力の関連を示唆しますが、研究方法には批判もあり、追試が待たれています。
シロトキ: 環境要因との関連を示す例として、水銀を摂取したシロトキのオスが同性のつがいを形成する割合が増加するという報告があります。

観察された種の広がり

ここに挙げた以外にも、非常に多くの動物種で同性間の性行動が観察されています。これらは哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫、さらには一部の無脊椎動物を含む広範なグループにわたります。

まとめ

動物の同性愛行動は、単に繁殖行動とは異なる側面を持つ、多様で普遍的な現象です。その機能や進化的な意義はまだ完全には解明されていませんが、社会的な結びつきの強化や他の生物学的な役割を持つ可能性が議論されています。今後、さらに研究が進むことで、動物行動学、進化生物学、そして生物多様性における性の役割について、より深い理解が得られると期待されています。

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