勝俣久作

勝俣 久作（かつまた きゅうさく）

勝俣久作は、1901年に神奈川県箱根町で生まれ、1968年に逝去した昭和期の著名な教育者です。彼の教育者としての活動や、家族、著書について詳しく見ていきましょう。

来歴

勝俣久作は、農家の次男として生まれ育ちました。小さい頃から勉強が大好きで、寺の住職の助けを得ながら高等小学校に通学しました。卒業後は代用教員として教壇に立ちながら、自らの勉学を重ねて上京。その後、教員資格を取得し、旧制麻布中学校の国語教師として教え始めました。彼の教え子には、後に著名な作家となった吉行淳之介や北杜夫がいます。勝俣は当時、「サルマタ」という渾名で親しまれていました。

しかし、戦後に突然教職を離れて事業を始めた彼は、残念ながらすべての試みがうまくいかず、会社勤めでも上司との関係に苦しむことになります。生活に困窮しつつも、帰宅後は仕事とは無関係な勉強をする日々を送り、飲酒して帰っても早朝には勉強を続けていました。その熱意は、後に代々木ゼミナールの創設に貢献し、副校長兼古文教師として活躍することにつながります。

人物

勝俣は学者を志していましたが、自己の学歴に劣等感を抱えていたことから、子供たちの教育に尽力することを決意しました。教え子の吉行淳之介は「先生のおかげで国語の授業に楽しさを見出した」と語り、北杜夫も勝俣の影響で文学作品への興味が芽生えたそうです。特に、勝俣が夏目漱石の名作『夢十夜』の一部を紹介したことで、彼の文学への扉が開かれました。

国文学と国史に対する情熱は高く、折口信夫や金田一京助が主催する研究会にも参加しました。また、民俗学にも興味を持ち、1927年には故郷の歴史をまとめた「箱根仙石原村史略」を執筆しました。彼の祖先が武田信玄に仕えていた逸話を語る際には、冗談混じりに「祖先は山梨の山賊上がり」と話したことでも、周囲を楽しませていました。

家族

勝俣久作の家族は、特に兄弟が各界で活躍していることで知られています。長男の孝雄は新日本製鐵元副社長、四男の恒久は東京電力会長、五男の宣夫は丸紅元社長として名を馳せました。彼らは「勝俣三兄弟」として産業界で有名です。このような兄弟がそれぞれ異なる上場企業でトップに立つ例は極めて珍しく、勝俣家は特異な存在です。二男の邦道は日本道路公団の元理事、三男の鎮夫は東京大学の名誉教授であることもまた、彼らの卓越性を示す要素となっています。

著書

勝俣の代表的な著作に「箱根仙石原村史略」があります。これは彼の故郷に対する深い愛情と歴史認識を基にした作品で、地域の歴史を後世に伝える重要な記録となりました。

彼の人生は、教育者としての姿勢や文学への情熱だけでなく、家族との深い絆に彩られていました。勝俣久作の業績は、教育界だけでなく、彼を取り巻く人々に大きな影響を与え続けています。

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